『Turning point』
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見舞いに来てくれた朋美を部屋に入れたかったが、何しろ数日寝込んでいたので部屋は荒れ放題。
しかも、風邪がうつるかもしれないのが心配だった。


「今部屋に入ると風邪を移すかもしれないから。」


逢えて嬉しかったけれど、やはり朋美に迷惑をかけたくなかったので見舞いを断ろうとした。

「大丈夫よ、私は頑丈だから。それに、部屋の中が荒れてるのなら、片づけもしなきゃね。」

といたずらっぽい目で朋美は返事をした。


これ以上断りきれないと悟った私は、諦めて朋美に部屋へあがってもらった。
部屋に入るないなや、朋美は部屋を換気しなきゃといって、窓を全開にして、片づけだした。

「少し待っていてね。 そしたらベッドを綺麗にするから。」

私は素直に朋美の好意に甘えることにした。



私はその間、部屋着に着替え、買ってきたコンビニの荷物を冷蔵庫にしまっていた。
朋美は手際が良く、30分で部屋の片づけをあらかた終えていた。

朋美に感謝の気持ちを伝えると、朋美は私に顔を突然近づけてきた。
びっくりして、のけぞると、強引に近づいてきた。

思わず体を硬直してしまうと、朋美は私の額に自分の額を重ね併せてきた。

「真熱がまだあるみたいだね。 おとなしく寝てなきゃダメだよ。」

朋美の息が私の顔にかかるほどの至近距離で、朋美はそう言った。
息が止まりそうだった。


何も言えずに呆然としている私を見て朋美はぷっと吹き出し、

「今更なに緊張しているの? ほらほら、早く病人は布団に入っておとなしくしていなさい。」

私の頬に手を当てて、優しく母親のように暖かい笑顔を私に向けた。
その手のぬくもりは暖かく、突き放されたあの夢をうち消してくれる気がした。



うつむくと涙がこぼれた。

やはり私は朋美が好きだ。

こんなにも私のことを気遣ってくれる優しさ、それだけで救われる気がする。


私がこんな邪な想いを抱えていても、朋美は純粋に私を友達として慕ってくれている。
それだけでもう十分だ。

涙を流していることに朋美は気づいて驚いていた。


「だ、だいじょうぶ? 体がまだ辛い? 苦しいの?」


私は見当違いな心配をして慌てている朋美がとてもかわいく、そして愛おしくなった。


「ちがうよ、そうじゃなくて、嬉しくて。 朋美の優しさが本当に嬉しくて。 ありがとう。」

泣きながら私はこみ上げた笑顔で朋美に心からの感謝の気持ちを伝えた。

「そ、そんな、今更そんな事いわないでよ。 もう、急にびっくりするじゃない。」


朋美は顔を赤らめて、照れくさそうに答えた。

「そんなことより、ほら、早くベッドにもどって。 お昼まだでしょ? 食べられそうなもの今作るから。」

朋美はそういうと、強引に私をベッドへ連れていき、台所へ消えた。


言われたとおりにベッドに入ると、綺麗に整えられた布団が気持ちよく感じた。
台所で朋美が料理をしている音が聞こえる。


安心したせいか、急に眠気におそわれ、意識が遠のいた。


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