『Turning point』
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泣きながら目が覚めた。声が枯れていたのが解った。


夢を見た。


とても悲しく、とても残酷な夢。

あれはいつか現実になることなのかもしれない。


熱を出したからなのか、私のなかの罪悪感が見せたのか。
夢の中で朋美が言った言葉が脳裏によみがえる。
決して叶わない想い、いつかは失ってしまう苦しさ、そして受け入れられるはずのない現実。


私は泣いた。ただただ、泣いていた。


人の中にはどのくらいの涙があるのだろう。
そう思うほど私は泣き続けていた。長い時間泣き続けていた。



日が暮れていた。
薄暗くなっていた部屋は、私を一層孤独にした。
頭痛は治まらず、熱も引いたようには感じない。

明日は病院に行こう。 そう思った。

体が弱ると気も弱る。 あの夢は現実なのか、私の気の弱さが見せた幻なのか。
どっちでも一緒。 夢であっても幻であっても、この想いが届くことがない。


それでも、今はまだ、朋美の側にいたい。それが私の本音だった。
失いたくはない。 離れてしまうまで側にいたい。

そう思うと、朋美に逢いたくなった。

今は逢ってはいけないという思いとは裏腹に、逢いたい気持ちがあふれる。
逢えなくてもいい、朋美の存在を感じたかった。


携帯の電源を入れた。
きっと、心配をしている朋美のメールが入っている。


今、朋美を感じることができるのは、この携帯だけだった。


予想通りメールが入っていた。 1通だけ。

メールには一言だけ書いてあった。

「無理をしないでゆっくり休んでね。」

たった1通のその短いメールで、私はまだ朋美と繋がっていることを実感できた。
それだけで嬉しくて、止まったはずの涙があふれてきた。


私は携帯を抱きしめながら泣き疲れた体を横たえ眠りについた。


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