『Turning point』
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熱に浮かされながら、夢を見た。


朋美が男性と手を繋ぎながら楽しそうに笑っている。
相手の姿はシルエットになっていてはっきり見えない。

いかないで!と声を掛けようとすると、声がでない。
追っていこうとすると体中に鎖が巻かれ、身動きができなかった。


出ない声を振り絞って、声なき声で朋美の名前を叫ぶ。


朋美はやっと私に気づき、男性から離れ、私のもとに来てくれた。

抱きしめようとしたけれど、私は全身をうごかすことができずにいた。

すると、朋美は私の耳元で囁いた。


『ねぇ、和美。 私のことずっと見ていたんでしょ?

 ずっと好きだったんでしょ?

 だから寝ている私にあんなことしたのね?

 でも、そんなのずっと前から知っていたわよ?』


そう言う朋美は薄笑いをうかべ、私を上から見下ろしていた。
まるで、軽蔑するかのような嘲るような笑顔で。

私はあまりのショックに何も言えず、呆然としていた。


『ふっ、私のことずっと好きだったなんて、気持ちが悪い。
 もう逢うこともないわ。            さよなら。』


そう吐き捨てるように言うと、朋美は待たせていた男と歩いて去っていった。



私は泣きながらずっとずっと謝りつづけ、叫び続けていた。離れていく朋美の背中が消えるまで。


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