『Turning point』
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「天気もいいし、外に何か食べにいかない?」


私たちは、その後着替えて散歩がてらに昼食と呼ぶには遅すぎる食事をとりに部屋を出た。
二人きりでいることが私には苦痛で仕方なくて、理由をつけて二人きりではないところに行きたかった。


外に出ると色々な音が耳に入ってくる。車の騒音、通り過ぎる人たちの会話。
お店から聞こえるBGM。なぜかこのときばかりは、これらの騒音が心地よかった。

私たちはフラフラしながら洋服を見たり、CDショップや本屋に入ったりしてウィンドウショッピングをしたりした。
2人きりの時間から解放されたことで、私はようやく落ち着いてきた。


それから近くの小さいけど美味しい洋食屋さんに入って、もうすでに昼食ではなく夕食になる食事を取った。
食べながらいつものように、何気ない話をした。私はいつもと同じように話ができているのか不安になったけれど
できるだけ気にしないように、普段の私であるように振る舞った。

気がつくと、20時を過ぎていて、とりあえずこのあとどうする?と聞いてみた。
心の中では、帰宅することをどこか期待しながら。


「んと、もうこんな時間かぁー、なんか今日はのんびりしたね。」

朋美が笑顔で嬉しそうに話しかけてくる。
私はそのたびに心臓に針を1本ずつ刺されているような痛みを感じる。

「そうだね。 だらだらのんびりしたね。」

私は自然な返事を返した。


「あっ、ねぇ、朋美は明日予定あるの?」


ズキン・・・。 嫌な予感がする。


「あっ、ごめん、明日はちょっと朝から出かける用事があるんだ。」


私はとっさに嘘を言った。朋美の言葉の意味を予知したから。

「そっか、それは残念。もう1泊しちゃおっかなって思っていたから」

少し恥ずかしげに笑いながら朋美はそう言った。
多分、そう言いたかったのだろうと解っていた。だから私は嘘をついた。

「そっか、ごめんね、今度またゆっくりおいで。」

私は、社交辞令じみた返事をした。私はもう朋美を泊めるつもりはなかった。

そうして、店を出た後、駅まで朋美を送った。

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