『Turning point』
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遅めの朝食を朋美とゆっくりと世間話をしながら取った。


朋美の笑った顔がとてもかわいくて、一緒にこうして朝を迎えたことが嬉しくて。
いつもは孤独な朝を、こうして自分が想いを寄せている相手と一緒に迎えていることが
こんなにも幸せなんだと改めて実感した。


ずっとこの時間が続けばいいのに。
無理だと解っていても、少しでもこの時間が続くことを願っていた。



朝食を食べ終えた後、せっかくの休みだからといって、2人でだらだらして過ごした。
テレビを見たり、並んで一緒に昼寝したり。

こんなにも、だらだらしながら、のんびりしながら1日を過ごしたことは初めてだった。


昼寝をしているときの朋美の寝顔をみていると、切なさとうれしさがこみ上げる。

無防備に寝ている朋美をみていると、私は無意識に少し大胆な行動に出てしまう。

髪に触れ、そして、髪にそっと口づけをする。
柔らかな感触が私の唇を刺激し、シャンプーの香りが鼻をくすぐる。

その時、朋美の手が少し動いた気がした。
私は慌てて体を起こし、朋美が起きてしまったのかと身を固くした。


その刹那、私の頭の中に激しい痛みが走った。


覚えている、これと同じ事があった気がする。
同じように、寝ている朋美に何かをして
慌てて身を起こしたような。


デジャヴ


いや、デジャヴではなく、確かに同じことがあった。
慌てて飛び起きて、朋美から離れる。



昨日、寝ている朋美に何かをして、慌てて離れた。 私は朋美に何をした?
居間で寝たということは、朋美と離れなければならない理由があった?


背筋に冷たい汗を感じた。
何をした。 私は一体何をしたのだろう。

思い出してみる。 昨日の夜の事を、あの後、何があったのかを。


思い出してみようとすると頭が痛くなる。
肝心な所で、頭に靄がかかっているように、もどかしく思い出せない。


何をしたのか朋美に聞こうにも、きっと眠っている朋美に対して私は何かをしたのだから
朋美が知るわけがない。 それよりも、絶対に知られる訳にはいかない。


私は罪悪感におそわれ、脱力してしまいそのまま座り込んでしまった。
朋美の顔をみることができない。 どうしていいのか解らなくなった。


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