『Turning point』
<<TOPに戻る

シャワーを浴びた直後の朋美は顔が上気していて、何とも言えない色っぽさを醸し出している。


見とれてしまいそうになる時、薬缶のお湯が沸騰した音がしたことで、我に返った。あぶないあぶない。


「昨日の残りみたいなものだけど、とりあえず朝食にしよう。」

目を合わさず朋美にそういって、居間に行くように言う。
朋美は何も言わずに居間へ行き、足を抱えて気のせいか小さくなってテーブルの前に座っていた。

インスタントのコーヒーを入れたカップと、トースター、食パンと昨日の余りの総菜のサラダなどを
何度か往復しながらテーブルに並べた。

パンを焼こうとしたとき、朋美が黙ってうつむいていたことに気がついた。
髪の毛もちゃんと乾かさず、心あらずといった様子で。


あれだけ飲んでいたのに、やはり昨日の事を気にしているのだろうか。
こんないつもの朋美じゃないままでいられると、心苦しくなる。


私は朋美の顔を見ずに、昨夜は途中からの記憶がないことをさりげなく笑いながら話した。
今朝起きた時に、どうして居間で自分が寝てるのかが解らなくて、どうしてか知ってる?と
さりげなく朋美に聞いてみた。


「昨日のこと、どこまで覚えてるの?」

やっと朋美が口を開いた。驚いた顔で、目を丸くしながら。
さて、どこからと言えばいいかな。一瞬考えてから、

「えぇーっと、どの辺かなぁ、3本目のワインを開けたところまでは覚えているんだけど。」

そういうと、朋美は安心したようなほっとした顔をして、やっと笑顔になって、

「そ、そうなの? 私のいつもの愚痴を、酔っぱらっていて覚えてないのね?」


毒づきながらいつもの朋美らしさを取り戻していた。

「ご、ごめんよぉ〜、だって、朋美があんなにワイン買ってくるなんて思ってなかったんだもん」

申し訳なさそうな笑顔をしながら、朋美に答えた。



やはり朋美の中で、昨夜の事が思った以上に気になっていたらしい。
朋美は安心したのか、自分の髪の毛を乾かしてなかったことを思い出して、慌てて乾かしに洗面台へ行った。

その慌てようがおかしくて、私は笑ってしまった。

次のページへ>>