『Turning point』
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どのくらいそうしていただろう。とても長い時間だった気がする。



自分の全身に走った衝撃の余韻に浸っていると、先ほどまで見開かれていた朋美の瞳が
いつの間にか閉じられている事に気づいた。


私は正直ホッとした。改めて考えてみると今日の朋美のぐずりは、
やはりいつもの甘えとは違っていたように思えた。

朋美が寝入っていることが解ると、やっと自分の体が言うことをきくようになった。

何事もなかったように寝入っている朋美を見る。 一瞬だった朋美の唇の感触がよみがえり、
もう独りの私が脳裏で囁きかける。


酔っぱらって挑発してきた朋美が悪い。
これはいつものお休みのキスと同じ。


衝動的な朋美の行動に、私自身何か触発されてしまったのだろう。

体の中の血が煮えたぎり、私は自分の本能に突き動かされたように、朋美の顔に近づいた。


息を止めて顔をのぞき込む。

瞼がしっかりと閉じられていることを確認して、私は自分の意志で、
寝ている朋美の唇に自分のそれを重ね合わせた。


全身が心臓になってしまったように自分の鼓動が体中から鳴り響いている。

触れているだけのキス、息が続く限りの長い時間、朋美の唇を感じていた。



無防備なことをいいことに、長いキスをしていると、朋美の手が動いたのを感じた。
起きたかと思い、一瞬にして朋美の顔から離れる。
様子を見ると、起きた訳ではなかったので、ホッと胸をなで下ろした。


安心したのと同時に、自分が何をしたのかを思い出し、自分の行動に顔から火が出そうになった。
なんてことをしていたのだろう。自分の取った行動をひどく恥じた。


罪悪感から朋美の近くにいることが耐えられなくなり、私はベッドから離れ、窓の外を見つめていた。
激しく後悔しながらも、自分の唇を指でなぞりながら朋美の唇の感触を思い出していた。


その時、頭の片隅で警告音が鳴り始めていたのを感じた。

これ以上近づいてはいけない。
自分が押さえられなくなる前に、全てが手遅れにならないようにと。


私も酔っていたのかもしれない。自分にそう言い聞かせて、もう2度と朋美には触れないと堅く決めた。



その夜、私はベッドに朋美を寝かせ、自分は居間で毛布をかぶり眠りについた。
朋美の寝顔を前にすると、自分がまた何かしでかしてしまう気がして、少しでも離れていたかった。


最後に飲んだ赤ワインが今頃ボディーブローのように響いていたのか、
瞼を閉じただけで私はすぐに深い眠りについた。

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