『Turning point』
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暗闇にうっすらと浮かぶ朋美の顔はいつものキスをねだる無邪気な子供のような顔とは違っていた気がした。


そんな違和感があったけれど、私はいつもの通り、朋美の頬にキスをするために、朋美の頬に手を寄せて
顔を寄せていった。

あと1cmで朋美の頬に触れそうになったとき、思いがけないことが起きた。


「っ!?」


朋美の頬を捕らえようとしていた私の唇の軌道が、突然強引に変えられ、
気がつくと朋美の唇の上に重ねられていた。


驚きのあまり目を見開くと、私の目の前には、先ほどと同じく見開かれている朋美の瞳があった。

その瞳の奥に、うっすらと自分と思われる影が写り込んでいるのが見えた。
私の両頬は、気づかぬうちに、朋美の手に包まれていた。


それは一瞬の出来事だった。


あまりの驚きに私はものすごい勢いで上半身を起こし、朋美の顔から一瞬にして遠ざかった。
そんな私の動きを、何も語らず朋美はじっと見つめていた。

ただふれあう程度のキス。

一秒足らずの軽いキス。


一瞬のことで、突然のことで、何がなんだか解らなかったけれど、
その刹那に重ねられた朋美の唇は、私の心臓を握りつぶしてしまうほどの激しい痛みを伴った。

体中の血が沸騰し、脊髄を槍で刺し貫かれたような、そんな衝撃が全身に走った。

私は起きあがった姿勢から身動きができず固まってしまっていた。

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