『Turning point』
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こんな事は今日が初めてな訳じゃなかった。彼女は泥酔すると甘え上戸になる癖がある。
まだ、私の部屋の時はいいけれど、外で飲んだ日には、本当に手に負えなかった。

この甘えモードが今日は割とすんなり終わってくれて、ほっとしたけれど少し残念な気もした。
いつもなら、この後に一番やっかいな甘えをしてくるからだ。



少しベッドからはみ出した朋美の体制をずらして、上に夏用の上掛けをのせ、
静かにベッドから立ち上がろうとしたとき、私は何かに手を捕まれた。


「えっ?」


何かといっても、間違いなくその手は朋美の手以外にあり得なかったが、私は驚きのあまり声を上げた。
何が起きたのか解らないままに、私は捕まれた手に強く引っ張られ、バランスを崩して
朋美の脇に倒れ込んだ。視界が暗い中、気が付くと私の目の前には、朋美の顔が目の前にあった。


閉じられていたはずの瞳が、暗闇の中でしっかりと開かれて、何か物言いたげに私の顔を見つめていた。


「和美、、、キスして。。。」


嫌な予感が走ったと同時に、朋美は一番やっかいな甘えをしてきた。

朋美は、いつも酔っぱらって寝る間際におやすみのキスをねだってくるのだ。

困ったことに、これをしないと絶対に寝てくれない。しかも、放っておくと癇癪まで起こし暴れ出す。


やっぱり、結局こうなるのか・・・。


落胆しながら、どうにかして寝てくれないものかと考えてみるが、この瞳の開き具合を見る限り、
そのまま寝入ってくれる可能性はなさそうだ。

仕方なく覚悟を決めて、私は朋美の頬に、お休みのキスをするために顔をゆっくりと近づけた。
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