『Turning point』
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「和美・・・。」



ふと昔の記憶に浸っていた時、私の膝の上で静かに寝息を立てていた朋美の寝言で我に返った。
朋美は一人でどれだけ苦しみ、どれだけ悩み、思い詰めていたのだろう。

長い間、ずっと自分の中で戦い続けてきたんだろう。
こんなか弱い体のどこにそれらに耐えられた強さがあるのだろう。



私は静かな寝息を立てながら寝ている朋美の華奢な体の重さを感じていた。

「このままだと風邪引くから、ちゃんとベッドで寝よう。」

泣き疲れた朋美をいい加減ベッドでちゃんと寝かそうと、優しく肩を揺らして起こしてみた。
今日は、いつもの泥酔とは違い、このまま寝てくれそうだ。

「うん、寝る。」

今日は意外なほどに素直に応じてくれる朋美がかわいらしく思えた。
ゆっくりと朋美の体を起こし、支えながらベッドへ移動した。

朋美をベッドに座らせ、Tシャツとパジャマのズボンを渡して着替えるように促す。


私はキッチンに向かって、朝二日酔いにならないよう、朋美に飲ませるための水を用意しに行った。
彼女の着替えを見ないようにするためでもあった。
キッチンに向かったついでに、テーブルの上に広げられた食べ残しのお総菜を冷蔵庫に入れて
使ったグラスなどを流しにおいた。


着替え終わったころをみはからって、水の入ったコップを朋美に持っていった。

すると、


「!? !!!」


もう少しで大声を上げ、持っていたカップを放り出すところだった。
なぜなら目の前には、着替えを終えているはずの朋美が自分の服だけを脱ぎ去り
下着姿で横たわっていたからで。


電気が付いてなかったから良かったけれど、返って薄暗闇に浮かぶその姿は
艶めかしいものにも感じてしまった。


私は動揺を抑え、とにかく着替えさせようと出来るだけ彼女の体に目を合わないように、
彼女の体を抱えて起こした。
服越しに感じる朋美の体温はお酒が入っているせいか、とても熱く火照っているようにも感じた。

「朋美! 朋美!!」

私は少し強引に彼女を揺すると、半分寝ぼけた朋美が甘い声を出してきた。

「かずみぃ〜、暑いし苦しいからこれいらなぁ〜い、」

といって、ブラジャーを外そうと手を掛けだした。


「うわっ、ちょ、ちょっと、ま、待ちなさい!!」


私はとにかく慌てて朋美の手を止めて、頭からTシャツをすっぽりかぶせた。
朋美がうめきながらも、ブラジャーを外したところで、彼女の手を強引にTシャツの袖に通させた。

そのまま寝ようとした朋美を再度ベッドに座らせて、パジャマのズボンを強引に履かせた。

朋美の素肌に触れることで、私の鼓動は一段と大きく鳴り響いていいたが、そのまま倒れ込むように
ベッドに横になった無邪気な朋美の顔を見ると、それも次第に落ち着いてきた。


「ったく、もう人の気も知らないで。勘弁してよね。」


そうつぶやきながら、私は彼女の頬を人差し指で突いて、その寝顔に安心した。


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