『Turning point』
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すでに2人でボトルを3本開けていて、朋美はまだ飲むと言い、4本目のワインをあけた。
それは最後のボトルで、フルボディの赤ワインだった。

7:3の割合で飲んだ量は圧倒的に朋美が多かった。
それでも、あまり酒に強い方ではない私は、頭がぼーっとしてきていたが意識はまだはっきりしていた。



「あのね、私、ずっと昔から好きな人がいるの。」

唐突だった。酔いが一気に回ったかのように頭がクラクラし、誰かに鈍器で頭を殴られた気がした。

「それで?」

動揺しているのを気づかれないように、私はできるだけ言葉を発しなかった。

「何度も諦めようとしたの。だから他の人ともつきあったりもしてきた。」

「???」



朋美が何を言っているのか解らなかった。
今までの10年間に、いくつもの恋愛話を聞いた。

楽しそうにのろけ話をしてきたり、それが終わりを告げた時に決まって深酒をし、
その度に酔いつぶれた彼女を見守ってきた。
それが、全て偽りの恋愛だった? 私は何がなんだか解らなくなっていた。



「朋美、一体何をいっているのか解らないよ。 酔いすぎて何を言っているのか解らなくなっているの?」

「んじゃ、酔った戯言だと思って聞いて。」



彼女はそう言うと、部屋の電気を消して、ベランダ側の窓の前に座り、外を見ながら
グラスを傾けていた。

明かりを消した部屋は、外から差し込まれる街灯や店のネオン灯によって
うっすらと柔らかい暗闇になっていた。
私はその中で、最後までとっておいた渋く重い赤ワインをひとくち口にした。


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