[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。
『Turning point』 |
<<TOPに戻る |
すでに2人でボトルを3本開けていて、朋美はまだ飲むと言い、4本目のワインをあけた。 それは最後のボトルで、フルボディの赤ワインだった。 7:3の割合で飲んだ量は圧倒的に朋美が多かった。 それでも、あまり酒に強い方ではない私は、頭がぼーっとしてきていたが意識はまだはっきりしていた。 「あのね、私、ずっと昔から好きな人がいるの。」 唐突だった。酔いが一気に回ったかのように頭がクラクラし、誰かに鈍器で頭を殴られた気がした。 「それで?」 動揺しているのを気づかれないように、私はできるだけ言葉を発しなかった。 「何度も諦めようとしたの。だから他の人ともつきあったりもしてきた。」 「???」 朋美が何を言っているのか解らなかった。 今までの10年間に、いくつもの恋愛話を聞いた。 楽しそうにのろけ話をしてきたり、それが終わりを告げた時に決まって深酒をし、 その度に酔いつぶれた彼女を見守ってきた。 それが、全て偽りの恋愛だった? 私は何がなんだか解らなくなっていた。 「朋美、一体何をいっているのか解らないよ。 酔いすぎて何を言っているのか解らなくなっているの?」 「んじゃ、酔った戯言だと思って聞いて。」 彼女はそう言うと、部屋の電気を消して、ベランダ側の窓の前に座り、外を見ながら グラスを傾けていた。 明かりを消した部屋は、外から差し込まれる街灯や店のネオン灯によって うっすらと柔らかい暗闇になっていた。 私はその中で、最後までとっておいた渋く重い赤ワインをひとくち口にした。 |
次のページへ>> |