『Turning point』
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ある程度部屋の片づけが終わったころ、チャイムが鳴った。

「お邪魔しまぁーす♪」

いつもの笑顔で朋美がやってきた。

「はいはい、いらっしゃい。 えっ? 随分と買い込んできたねぇ。」


朋美はどこぞのデパートのお総菜がいっぱい詰まっていると思われる大きな紙袋を下げ、
同じデパートで買い込んだワインのボトルの入った紙袋を胸に抱え込んでいた。

「今日はとことん飲もうね♪」

「はいはい、そうだと思ったよ。まっ、適当に座って、もうお腹ぺこぺこだよ。」

「うん、食べる物もいっぱい買って来たから。食べよ! 食べよ!」



狭いテーブルの上に朋美が買ってきた総菜が並べられ、甘口ですっきりとした
ドイツの白ワインで乾杯し、金曜の宴を始めた。
私はとりあえず空腹を満たす為に買われた総菜を口にした。

「今日は何があったの? 急に押し掛けてきて。」

「ん? 何が?」

「こんなにお酒買い込んで、今日のヤケ酒の理由はなんなの?」


朋美の顔を見ず、総菜の生春巻きを食べながらさりげなく切り出した。
唐突に朋美が飲みを誘ってくるときは、決まって何かがあった時。
たいてい理由は恋愛絡み。そんな話を聞きたくないけれど、放ってもおけない。

「あっ、やっぱり解った?」

「当たり前じゃない、何年ダチやってると思ってんの?」

「そっか、そうだよね。 ごめんね、いつもこんな時つきあわせて。」

「いいよ、今に始まった話じゃないし。明日は休みだし、好きなだけ飲んでいきな。」

「ありがとう。 迷惑ついでで申し訳ないけど、今日泊めてね?」

「最初からそのつもりだったんでしょ。ったくしょうがないなぁ。」

私はそういいながら、彼女のグラスに一杯分より多めのワインをつぎ足し、1本目のボトルを空にした。

「ありがとう。 和美はいつも優しいね。 無愛想なのに本当はすごく優しいんだよね。」

「それって誉められている気がしないんですがねぇー。ってか、もう酔ってきたの?」



優しくするのは朋美だけだよ、という言葉を飲み込んで照れ隠しに私は自分のグラスのワインを飲み干して、
2本目の白ワインをあけた。まだ口当たりの優しい白ワインを飲んでいたかった。
この後に朋美がうち明けてくると思われる恋愛沙汰を聞く時の為に、渋く重い赤ワインをとっておきたかったから。




そこからしばらくは、たわいもない話をした。
まだあまり酔いが回ってない朋美は、まだ本題に入りたくないみたいだった。
気がつくと、日付が変わり時計は1時を回っていた。


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