『Turning point』 |
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時計が20時を過ぎたところで私は仕事を終え、会社を出ようとすると携帯が鳴った。 液晶を見ると、朋美と表示されている。 ドキンと心臓が一鼓動する。いつまでたっても、朋美からの電話に慣れない。 留守電に変わる前に、何事もなかったように電話に出る。 「もしもし、和美? 仕事終わった?」 どこからか見られているようなタイミングでの電話。 「うん、今終わって会社を出たところ。」 「実はさー、今外で買い物していたの。ご飯まだでしょ? 一緒に食べない?」 「いいよ。 どこへ行けばいい?」 「ねぇ、和美は明日何か予定ある?」 明日は土曜で休みだ。こういう時は、決まって朋美が深酒をしたいというアピール。 明日の予定は特にないが、朋美は深酒すると手に負えなくなる。 かといって、誘われると断れる訳もない。 泥酔の朋美の面倒を見る覚悟を一瞬に決めて答える。 「いや、特に予定はないよ。」 「それじゃ、和美の部屋行っていい? 食べるもの買って行くから部屋でゆっくり食べようよ。」 「朋美は食べより飲みの気分なんじゃないの? まぁ別にいいよ。それじゃ、適当に何か買ってきて。先帰って部屋を片づけてるから。」 「うん、それじゃ、あとで行くね♪」 弾んだ声で、朋美は電話を切った。 朋美の両親は、朋美のお兄さん夫婦と同居していて、そこから割と近いマンションに 朋美は一人暮らししている。 私は実家から離れ、どうせ通うなら近い方がいいと、会社の隣駅にマンションを借りて一人暮らしをしている。 朋美のマンションは、会社から20分ほど離れている為、会社に近いことを理由に、 自然と私の部屋を朋美は行き来することが多かった。 「まぁ、外で酔っぱらわれて送るより楽かな。」 いかにも面倒そうな独り言をつぶやきながら、内心は嬉しくてしかたなかった。 私の部屋という外から遮断された空間で、朋美と過ごす時間は格別なものだった。 借りてきたビデオを見ながら、朋美の横顔を盗み見ることが楽しみだった。 うたた寝する朋美の無防備な寝顔を見られるのが嬉しくてたまらなかった。 なにより、部屋で2人きりになることで、朋美を独占できるような気分になれるのが一番嬉しかった。 きっと顔がにやけているとは思いながらも、無意識に早歩きで自分のマンションへ急いだ。 |
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