『愛しきロクサーヌ』
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朋美に押し倒された格好になって、10分ぐらいたっただろうか。

思わず、朋美をギュっと抱きしめてしまったものの、
冷静になってみれば、朋美の体温と感触がやけに生々しく感じられ
このままだと、自分がどうにかなってしまいそうになり、
朋美を抱きしめていた手をゆっくりとほどいた。

朋美はまだ寝ているらしく、静かに寝息を立てていた。

静かに、朋美を起こさないように、体をずらし、そっと体を布団の上に寝かせた。
風邪を引かないように布団を掛け、そっとそこから離れた。

昨日、炬燵でうたた寝していた時といい、さっきの突然の抱きつきといい、
何かあったのかと少し心配になる。

抱きしめた朋美の体が、本当にか弱かったことを思い出す。
そっと朋美が寝ている横に近づき、そっと寝顔を見る。

(ずっと側にいるから、大丈夫だよ。)

心の中でそう呟く。

「ん、ぅん・・・、和美??」

心の中のつぶやきが聞こえてしまったのかと思い、一瞬焦ってしまう。
でも、口に出してなかったから聞こえるハズがないので、ホッとした。

「朋美、起きた?」

「ぅんーーー、 今何時?」

「もうすぐ10時だよ。 そろそろ起きる?」

「うん、起きる。 おはよー、和美。」

「おはよ、朋美。」

少し寝起きで幼い朋美を見ると、思わず笑顔になってしまう。

「それじゃ、この布団上げるから、朋美はあっちで着替えてくれる?」

「うん、解った。 ついでに歯磨いてくるから洗面所借りるね。」

そう言って、朋美は布団から勢い良く飛び出して洗面所へと向かった。

私は居間に敷かれた布団を上げて炬燵の台を元に戻した。

それから、着替えてきた朋美と遅めの朝食を一緒に取った。

テレビを見ながらパンをほおばっていると突然朋美が口を開いた。

「そういえば、昨日ケーキ食べなかったね。」

「あっ、そうだったね。 冷蔵庫に入れっぱなしだ。 あとで、食べないとね。」

「うん、それと、プレゼント交換もしないとね♪」

「あぁ、そうだった。 渡してなかったね。」

「それじゃ、ケーキ食べるときにしようね!」

嬉しそうに朋美はそう言って、珈琲を口にしていた。

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