『愛しきロクサーヌ』
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「和美・・・・、 和美・・・?」

ん、ぅん?

深い眠りについていた所を、優しく肩を揺すられ、耳元で優しく名前を呼ばれている気がする。

夢の中から? それとも??

「和美・・・、和美・・・?」

また呼ばれてやっと、夢の中にいる私を誰かが呼んでいる事に気が付いた。

重い瞼をゆっくりと開けて、耳元に感じた声の主をゆっくりと見上げる。

「朋美? どうしたの??」

「どうしたのって・・・、和美、どうしてこんな所で寝てるの?」

ぅん?? どうしてって、えぇーっと・・・。
目覚めたばかりで頭がちゃんと働かない。

「んー、ごめん、今何時?」

「えっ? 今は1時過ぎだけど。」

1時・・・、ってことは、あまりまだ時間たってないのか・・・。
そっか、布団をこっちで敷いて寝ているから、どうしたのかって聞いてきたのか。

やっと頭が動き出してきた。
でも、わざわざ寝床を別々にした理由を作って話すのも面倒だし、
このまま寝付いた方がいいような気がした。

「ん・・・、 ごめん、朋美、なんか猛烈に眠いから・・・、おやすみ・・・。」

再び布団を被って寝ようとすると、朋美が無理矢理布団をめくり上げる。

「ちょっとー!! 和美ってばぁー!! 人の話聞いてるの??
寝るなら、ベッドで寝て。 私がこっちに寝るからぁー。」

「んー?? ほら、一応朋美はお客さんだから、ベッドに寝てね。 それじゃ、ほんと眠いから。」

私はこれ以上押し問答するのが面倒になって、強引に布団を被り寝入るフリをした。

「和美・・・。」

静かに朋美が離れていくのが解る。

ごめん、ごめんね朋美。
でも、もう一緒に寝るのは、私自身怖いから。

今の関係を壊したくないから。
間違って、自分の欲望のままに、朋美に触れてしまうのが怖いから。
だから、ごめんね。 本当にごめん・・・。

朋美が寝ているベッドと、今私が寝ている布団との距離はすぐ隣りだったけれど
でも、その距離がとても遠く思えた。

ほんの隣りなのに、手を伸ばすと届かない。 触れることもできない。
朋美がそこにいることを感じるのに、朋美の体温を感じることができない距離。

それは、今の私と朋美の距離そのものなのかもしれない。

ベッドに背中を向けて布団を被り直す。
布団を被っているのに、ひどく背中が寒く感じる。
といっても、実際に寒い訳じゃない。 寒いのは私の心の中。

解ってる。 この距離を保たないといけない。
明日も、そして、これからもずっと。

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