『愛しきロクサーヌ』
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「24日って朋美、クリスマスイブは、予定があるんじゃないの?」

突然の事で、驚いて咄嗟にそう答えてしまった。

「ううん、今年は何も予定なくて。」

そういえば、前に朋美がうちに泊まりに来て、酔っぱらって今までの事を全部懺悔して来た時に
つき合っていた相手とは別れたって言っていた事を思い出した。
でも、その話しを私は酔っぱらっていて覚えていない事になっていたので、
あえてその事には触れないようにした。

「へぇー、そうなんだ。
っていうか、クリスマスイブの日に、わざわざ、うちにビデオ見に来るの?」

「どーせ、家にいたってつまらないし。
どうせなら和美の部屋で一緒に過ごしたほうが楽しそうなんだもん。 ダメ?」

うっ・・・、その上目遣いでおねだりするような甘えた目をするのは反則です。
それだけで、私の胸の中は激しい動悸が鳴り出し、頭の中ではパトカーのサイレンが鳴り響いている。

この動揺を悟られないように、必死で冷静な振りをする。

「あっ、いや、別にかまわないけど、せっかくのクリスマスイブなのに、それでいいの?」

「うん、私は和美の部屋でのんびり過ごすのが一番楽しいし。
あっ、それなら、2人でクリスマスするっていうのはどう?」

朋美と初めてクリスマスを一緒に過ごす・・・、ものすごく嬉しい。

「う、うん! それじゃ、ケーキとシャンパンとか美味しいものを一杯買って、
ささやかなクリスマスパーティーでもしよっか。」

きっと嬉しさが顔からにじみ出ていただろうけど、かまわず満面の笑みで朋美に答えた。

「ねぇねぇ、それなら、プレゼント交換もしない?」

また朋美が突然の提案をしてくる。
プレゼント交換。 そういえば、朋美には誕生日以外で何か贈り物をしたことがなかったなぁ。
そんな事を思い出すと、その提案に喜んで乗った。

「いいねぇ。 プレゼント交換なんて、なんか学生の時以来かも〜。」

「それじゃ、決まりね♪」

朋美が、満足げな笑顔を浮かべていた。


こうやって生まれて初めて、自分の想い人と過ごすクリスマス(親友と過ごす意味だろうけど)の
予定が決まったのは1ヶ月前。

あれから、クリスマスが待ち遠しくて仕方なくて。
12月に会社のボーナス(といっても、あまり景気がいい金額じゃないけど)が入ってから、
朋美に渡すクリスマスプレゼントを何にするかずっと考えた。
ギリギリ当日までに用意すればいいと思い、それまでの土曜、日曜に、いろいろ物色をしてみた。

でも、結局何をあげればいいか解らず、とうとう1週間前になってしまった。



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