『愛しきロクサーヌ』 |
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=エピローグ= 12月25日 21:00 「それじゃ、今日はありがとう。 楽しかった♪」 「いえいえ、こちらこそ。 淋しいクリスマスを過ごすところだったから、良かったよ。」 「それじゃ、また明日会社でね!」 「ほい、腕時計ありがとうね。」 「いえいえ、こっちこそ、マフラーありがとう。 それじゃ!」 プレゼント交換をした後、ケーキを食べ、その後は、部屋でゆっくりと2人で時間を過ごした。 それから夕方に外に出かけ、夕食を外で取った後、駅まで朋美を見送った。 朋美を見送った後の部屋への帰り道、渡せなかった懐中時計の事を考えていた。 渡すべきだったんだろうか。 でも、渡してしまうと、私の想いで朋美を縛り付けてしまいそうな気がした。 (やっぱり、渡さなくて良かったんだ。) 高い出費ではあったけれど、でもあれはあれで良い物だったから、 私が使ってもいいかなと思った。 でも、腕時計を朋美からもらったから、それも必要なくなってしまったけれど。 部屋に帰ると、さっきまで朋美が居たからか、とても部屋が静かに感じた。 これがいつもの日常。 それに、明日会社へ行けばまた朋美に逢える。 部屋の片隅に置き去りにしていた懐中時計の入った紙袋を見つめる。 ロクサーヌという名の懐中時計。 想い人のそばにいつもそっといて、共に同じ時を過ごすという意味が込められたもの。 ロクサーヌ。 シラノが想い続け、最後までその想いを告げる事がなかった愛しい人。 私の愛しきロクサーヌ。 私もシラノのように、ずっと側で支え続けたい。 この気持ちを伝える事はないけれど、それでもあなたの傍に居続けたい。 そう願わずにはいられなかった。 でも、私はこのとき気付かなかった。 ゴミ箱に捨てた、渡せなかったクリスマスカードと、部屋の片隅に置いていた 渡せなかった懐中時計の包みを朋美に見られていた事を。 朋美が寝ぼけながら抱きついてきたことと、 マフラーを渡した時の違和感のあった朋美の表情の理由を知ることになるのは しばらく後の事だった。 |
あとがきいっとく?>> |