『めぐり逢えたら -朋美Side-』
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目覚めると、日が少し高い位置に昇っていた。

今何時?

部屋の中の時計を探してみると、8:20

ふと、寝る前に和美に抱かれていた事を思い出す。

けれど、起きると自分は、いつもと同じように、Tシャツとスウェットを着ている。

???

昨日、確かに和美の体を感じ、包まれ、抱かれたはずなのに。

あれは夢?

起きあがると、和美の姿がない。
どこか買い物にでいったのだろうか?

その前に、洗面所に行き、鏡の前で確認をする。

昨日、和美に付けられた唇の跡を。
Tシャツを脱いで、鏡の前に立つ。

すると、昨日触れられた首筋に、確かにあった。
和美に、そっと吸われた跡、間違いなく和美の唇の跡が。

良かった・・・、夢じゃない。

少しほっとする。
きっと、昨日私が寝た後に、和美がそっと着せてくれたのだろう。

そのまま和美が戻って来る前に、シャワーを浴びる。


シャワーを浴びながら、昨日、和美に抱かれた事を思い出す。
それだけで、体中が熱くなる。

和美に抱かれた、和美も自分を想ってくれていると思っていいのだろうか。
私の想いは、受け止められると思っていいのだろうか。

そんな事を考えながらシャワーから出る。

生乾きの髪をタオルで拭きながら、居間に戻ると、
テーブルに、手紙が置いてあった。

封筒に、「朋美へ」と書いてある。

何か胸騒ぎがする・・・。 慌てて開けて便箋を取り出す。


朋美へ

昨日は、酔っぱらっていたとはいえ、ごめんなさい。
こんな事をしておいて、謝って済むことじゃないと思うけれど
昨日の事は忘れてください。

昨日言おうと思っていたのだけれど、実は会社を辞める事にしました。
言おう言おうと思いながら言えなくてごめんなさい。

直接言わなければならないのに、手紙でごめんなさい。

どうしても外せない用事があるので、出かけます。
鍵は、申し訳ないのだけど、そのまま持っていてください。
それと、月曜から1週間会社を休みます。 一週間後、一度戻ります。
その時に、改めてちゃんと話をします。

こんな勝手な事をしてごめんなさい。

                                   早川 和美


ど、どういうこと?!

一体、何があったっていうのっ?!

何がなんだか、状況が解らない。
昨日の出来事を忘れて欲しい? どうして??

頭の中が混乱する。

携帯を取り出して、電話を掛ける。

お願い! 和美、出て!!

掛けても掛けても、流れてくるのは、機械的な音声だった。


和美・・・、どうして?!
何がなんだか、解らないよ・・・。 和美・・・。


床の上に泣き崩れても、静まり返った部屋の中には、自分の涙声だけが響いていた。

あとがきという名の言い訳>>