『めぐり逢えたら -朋美Side-』 |
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定時のチャイムが鳴った後、仕事の後かたづけを済ませ、ロッカーへ行くと和美がいた。 制服を着替えながら、夕食をどうするかを話す。 結局、和美のマンションの最寄り駅にあるデパートで、総菜を買って帰ることにする。 今は何も考えないようにしよう・・・、そう思い、普段通りの態度で接する。 2人では、どう考えても食べきれない量の総菜を買い、何人で飲むのかと思うほどに酒類を買い込む。 デパートから和美のマンションまでの帰り道、見上げる夜空は都心とは思えないほどに美しかった。 「どうぞ。」 通された部屋はいつもと同じはずなのに、どこか違和感を感じる。 何がといわれると解らないけれど、どこか寂しくなった気がする。 呆然と立ちつくしていると、和美が背後から声を掛けてくる。 「どうしたの? ほら、座って。」 「う、うん・・・、ねぇ、和美、この部屋何か変わった?」 「えっ? そんな事ないけど? まぁ、少しいらないものを捨てたりはしたけど、それくらいかなぁ。」 「そ、そう・・・。」 何が違うか解らなかったけれど、気にしすぎなのかもしれないと思うようにした。 それから、買ってきた総菜を口にしながら、2人で食事をする。 和美は何も言わない。 だから、私も何も言わない。 テレビを見ながら、笑いながら、そしていろんな世間話をしながら、時間は過ぎていった。 時計は、0時を指している。 気が付けば、2人でワインを3本空けている。 いつもなら、大半は私が飲んでいるのに、今日は珍しく、和美も私と同量口にしている。 私的には適量で、和美は普段飲まないことを考えれば、明かに許容範囲を超えていた。 「ねぇ、和美? 今日飲み過ぎなんじゃない?」 「そう? でも、そんなに酔ってないけど。 私結構飲めるんだねぇ〜。」 人ごとのように言い放つけれど、確かに和美は酔っぱらっているようには見えない。 けれど、これ以上飲むと、流石に明日に影響がでる。 なのに、更にワインを空けようとしている和美の手を制する。 「和美、もう飲むの辞めた方がいいよ。明日辛くなるよ? 普段飲まないんだから。」 「まだ物足りなくて、朋美はまだ飲めるでしょ?」 「和美、ダメだって。 少し時間をおかないと、ねっ?」 立ち上がって、和美に飲ませる水を冷蔵庫から取り出そうと台所へ行く。 500mlのペットボトルを取り出し、戻ろうと振り返ると、そこに和美が立っていた。 「えっ?? も、もう、びっくりするじゃない。」 一瞬驚いて、落ち着いてから苦情を言うと、和美が思いがけない行動を取った。 ガタン・・・。 (えっ?!!) 和美に正面から抱きしめられる。 あまりに突然な事に、手にもっていた、ミネラルウォータのボトルを床に落としてしまう。 力強く、でも、優しく背中に手を回されて抱きしめられる。 頬に和美の髪の感触、肩口に吐息を感じる。 「か、和美??」 驚きを隠せず、裏返った声で和美の名を呼ぶ。 途端に、ギュッっと腰に回された手に力が込められ、体中に和美の体温を感じる。 和美の体温をいつまでもこのまま感じていたい。 抱きしめられた和美の体は、柔らかく、とても暖かい。 このままずっと抱きしめていて欲しい、離さないでいて欲しい。 だらしなく力が入らず降ろした両手に力を入れて、和美の背中にまわして、抱きしめ返す。 (好き・・・。) 心の中で、そっとつぶやく。 和美が、抱きしめてくれている、それだけで、涙が出そうになる。 ギュッと、回した腕に力を入れる。 すると、カクン、と、和美の頭がうなだれてくる。 えっ? 同時に、和美の体重がいっきに掛けられて、支えられなくなり、後ろに後ずさりする。 「和美? 和美??」 のしかかられた体を持ち上げ、和美の顔をのぞき込むと、瞼が閉じられ、意識がない。 えっ? 寝ちゃったの?? このまま和美の体を支えられない、起こさなければ。 「和美!! 和美!?! 起きて、ちょっと、起きて!!」 大きな声で、私が押しつぶれる前に、必死で和美を起こす。 「ん・・・・、 ぅぅん・・・。」 「起きて! ここで寝ちゃダメ! ほら、寝るならベッドに行こう!!」 少し意識が戻り掛けた和美の体を支えながら、引きずるようにしてベッドに移動する。 ドタンっという音と共に、なだれ込むようにして和美と一緒にベッドに倒れ込む。 ペチペチと和美の頬を叩きながら、このまま寝かす訳にもいかないので、どうにか起こそうと試みる。 「和美、このまま寝ちゃだめだよ、ほら、ちゃんと着替えて寝ようよ。」 一向に起きようとしない和美。 仕方がない、このままだと風邪を引く。 毛布を取り出そうと、体を起こそうとすると、唐突に、右手を強い力で引っ張られる。 「えっ?」 引っ張られた反動で、ベッドに体が戻される。 一瞬何が起こったのか解らず、閉じた瞼をあけると、眼前に和美の顔があった。 |
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