『めぐり逢えたら -朋美Side-』
<<TOPに戻る

「これで気まずくなるからって、会社を辞めるっていうのは、無しね?」

「あっ・・・、はい。」

滝川さんに話をした後、きちんとけじめを付けられなかったら、辞めることを考えていた。
その考えまでも、見透かされていたようで、ドキリとする。

「私が戻ってきた途端に、女性社員が2人も辞められたら、流石にショックで落ち込むわ。」

「えっ? 2人??」

「えぇ、昨日、ある子から会社を辞めると打ち明けられたのよ。急な話だから、驚いたんだけど。」

(昨日・・・、昨日?? 昨日といえば、和美と滝川さんがタクシーに乗ってどこかへ・・・。)

「ど、どこの女性ですか?」

「そ、それは、ちょっと・・・。本人から、口止めされているから・・・。」

「もしかして、それは、私に近い友人では?」

そんなはずはない。 その可能性をうち消す為に、あえて和美を臭わせる。

「あら、もう、早川さん本人から聞いているのかしら?」

滝川さんの口から出た、和美の名前が発せられても、一瞬どこの誰の事だかわからなかった。

「か、和美・・・?、和美なんですか??」

「えっ? あっ・・・、早川さんからまだ聞いていなかったの??」

滝川さんの表情が一瞬にして歪む。
それで確信できた。

和美が会社を辞める??

「昨日、早川さんに夜話があるっていわれて。 それで夕食がてら話を聞いたの。
でも、本人から、堅く口止めされているから・・・。
このことは、まだ早川さんには黙っていてもらえるかしら・・・。」

昨日の状況を淡々と説明している滝川さんの声が、遠いところから聞こえる。

「あっ、はい・・・。 解っています。」

機械的に返事を返す。
けれど、頭の中は、真っ白で、何も考えられない状態になった。

「すみません・・・、今日はこれで失礼します・・・。」

「そ、そう・・・。 解ったわ。」

不自然な会話で、私はホテルのラウンジを後にした。


次のページへ>>