『めぐり逢えたら -朋美Side-』 |
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思っていたよりも熟睡できたのか、セットした目覚ましで目が覚めた。 寝汗で体が気持ち悪い。 定時後までには時間があるので、シャワーを浴びる。 朝から何も食べて居なかった事に気付き、部屋にあるものを軽く口にした。 テレビをつけ、呆然と時間が過ぎ、滝川さんからの連絡が来るのを待つ。 外は日が落ち、すっかり暗くなってからしばらくすると、携帯が鳴りだした。 ディスプレイには、先ほど表示された番号が表示されている。 「もしもし?」 「滝川です。 思ったより会議が早く終わったから、もう会社を出られるけれど、どうする?」 「えっと、滝川さんの良い所に伺います。」 「そう・・・、そうねぇー、それじゃ、私が止まっているホテルの最上階のラウンジでいいかしら。」 「わかりました。」 「それじゃ、19時30分頃に待っているから。」 「はい。」 「じゃ、後で。」 電話を切って、冷静に支度を始める。 着替えを済ませ、私は指定された場所へ向かった。 約束の時間に、指定されたホテルの最上階のラウンジに着くと、カウンターに座っている滝川さんの姿が目に入る。 知らず知らずに体に力が入る。 静かに近づき滝川さんの後ろまで行くと、声を掛けた。 「お待たせしました。」 「どうぞ。」 目で合図されるように、隣りに座る。 滝川さんの前には、グラスが置かれ、すでに何かを飲んでいるようだった。 「何飲む?」 「マルガリータを。」 沈黙の間に、カウンター内のバーテンダーがシェイカーを振り、あっという間に目の前にグラスが置かれる。 「それじゃ、乾杯。」 まだ手を触れていない私のグラスに、自分のグラスをカチンと合わせ、滝川さんはグラスの褐色の液体を口にする。 (言わなきゃ・・・・。) じっと、目の前に置かれたグラスを凝視しながら、どう切り出そうか悩んでいると、不意に沈黙が破られた。 「今日は、この間の返事をくれるのかしら・・・。」 考えを読まれているかのように、こっちの言いたい話題を唐突に切り出される。 「その表情からすると、あまりいい返事ではなさそうね。」 早く言わなければならないのに、肝心の言葉が、なかなか口から出なかった。 |
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