『めぐり逢えたら -朋美Side-』
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ダイアルインで課に電話して、滝川さんに繋いでもらおうとしたけれど、会議中で不在だと言われた。
仕方ないので、携帯の番号を渡してもらうことにする。

電話を切った後、ベッドにうつぶせになる。

滝川さんとのこと、ちゃんとはっきりさせよう。
全て断ってしまえばいい。

想う相手は誰かと聞かれたら、適当に濁せばいい。
誰かというのをはっきりと答える必要はない。

8年という時間で、これ以上私の中に踏み込ませない。

もう、これで終わりにする。

確固たる決意を固めた時、不意に携帯が鳴り出す。

知らない携帯の番号らしきものが表示される。
おそらく、滝川さんの携帯。

「もしもし・・・。」

「もしもし? 滝川です。 さっき電話をくれたみたいだから。」

「すみません。 お仕事お忙しい所。」

「かまわないわ。 それより、今日お休みだと思っていたのだけど、どうしたのかしら?」

「突然すみません、今日仕事が終わってから少し時間をいただけないでしょうか。」

「・・・。   週末にゆっくり話す・・・って訳にはいかないのかしら。」

「できれば今日・・・。」

「ふぅ〜・・・。 解ったわ。 定時後に少し会議があるから、終わったら連絡するわ。」

「すみません。」

「それじゃ、また後で。」

「失礼します。」


静かに電話を切る。

もう後には引けない。

今日で全てはっきりさせる。
和美への後ろめたさも、過去の想いも、全て今日で断ち切る。

電話を切った途端に、疲れがどっと押し寄せる。

これじゃ、出かけることもままならない。

16時に目覚ましをセットして、少し眠ることにする。
全てに決着をつけるための気力と体力を回復させるために。

翻弄され続ける滝川さんと対等に話をするために。


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