『めぐり逢えたら -朋美Side-』
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いつもと同じ昼休みなのに、空気が重い。
私がぎこちないから、和美が何か感じているのかもしれない。

いつもの和やかな雰囲気はひとかけらもなく、寧ろ、どこかピーンと張りつめた空気さえある。

いけない・・・、このままじゃ、和美がもっと不審に思う・・・。
そう思って顔を上げようとしたとき、和美に不意に、滝川さんの話題を出された。

反射的に、顔を歪めてしまう。

しまった・・・。

「ど、どうかしたの?」

「えっ? あっ、ごめん。 今他のこと考えていたから・・・。 ごめんなさい。」

「あっ、いや、ごめん。 なんでもない。」

更に一段と空気の重みが増す。 和美が目の前にいるのに、手を伸ばせない。
いつまでも、いつまでも、いつもの穏やかな日々が続けばいいとおもっていたのに、現実は残酷で。
滝川さんが戻ってきて、やり直しを迫っている今、私はなんらかしらの答えを出さなければならない。

勘がいい滝川さんの事、私が和美の傍にいることで、想い人が和美であることにいずれ気付いてしまう。
そんな事になったら・・・。

もう和美の傍にはいられない。 そうなったら・・・、考えるだけでも怖い。

和美・・・。

あなたを強引にさらってどこかへ隠してしまえたら。
あなたを奪って、遠いどこか遠い所へ飛べたら・・・。

ねぇ、和美? そんな事をしたら、あなたは、もう笑わなくなるのかしら?

そんな思いで、和美を見ると、その視線の先が遠くを見つめていることに気付く。
和美? どこを見ているの? 何を考えているの?

「和美? 和美???」

「えっ? な、なに?」

「どうしたの? 何かずっと考え込んでいるみたいだけど・・・、どうかしたの?」

「えっ? い、いや、別に?」

和美のどこか不安そうなその瞳に、吸い寄せられる。
和美の傍に居たい・・・。 和美と一緒にいられたら・・・。
そんな不安がこみ上げる。 滝川さんにかき乱された心の安らぎを和美に求めてしまう。

「ね、ねぇ・・・、和美・・・。」

「なに?」

全てを打ち明けtしまえたら・・・、和美への想いもこの場て告げてしまえたら・・・。

言葉が喉元までこみ上げる。

(ダメ・・・、言ってしまったら全てが終わる・・・)

ぐっと堪えて、精一杯笑顔をつくる。

「ごめん、なんでもない。」

私はぎこちない笑顔で、さりげなく、なんでもない素振りを見せた。


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