『めぐり逢えたら -朋美Side-』
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「今更そんな事言わないでください。 私にはもう想う相手が・・・。」

「そうよね・・・、それだけ綺麗になったんですもの、きっと好きな人がいるとは思ったわ。」

「だったら・・・。」

「でも、想う相手っていうことは、片思いって事よね? 打ち明けられない相手っていう事かしら?」

「なっ!!!」

「あら、図星のようね。 その慌てようは。 あなたが打ち明けられないっていうことは、
 こっちの業界の人ではないわね。」

「や、やめてください!! 詮索するの。」

「ヘテロ(異性愛者)かしら?」

「その質問に答える義務はありません。」

「それはそうね。 でも、一つ聞きたいわ。」

「な、何ですか?」

「あなたは、想い人がいるのに、どうして、私を迎えに、ここに来てくれたのかしら?」

「そ、それは・・・。」

「今は答えなくてもいいわ。 ただ、来てくれたということで、私はまだ望みがあると確信したから。」

「た、滝川さん!!」

「あら、もうこんな時間ね、 今日は、まだ時間はあるかしら?」

「な、なんですか?」

「日本についた初日に、一人で夕食を食べるのは寂しいわ。
 迎えに来てくれたついでい、つき合ってくれない?」

「っ・・・。」

「ごめんなさい、もう恋愛の話しはこれでおしまい。 
 変な感情は抜きにして、ただ昔の友人として食事につき合ってもらうことはダメかしら?」

この人の話術にいつも翻弄されてしまう。 こう言われたら断れない。

「わかりました・・・。」

「ありがとう。 それじゃ、今日泊まるホテルに一度チェックインしていいかしら。
 その後、食事に行きましょう。」

東京の某有名ホテルに一緒に向かい、滝川さんが部屋に荷物を置いてくる間、
私はロビーで待っていた。
もう忘れたハズなのに、今は和美の事を想っているのに、
どうして、こんなにも翻弄されてしまうのだろう。

どうして、今日来てしまったのだろう・・・。
全ては、あのメールがきっかけだった。 


“ 久しぶり。

 突然メールしてごめんなさい。
 あんな別れ方をしてメールを出せる立場ではないとわかっているけれど。
 ○月○日、○時○分成田着 ニューヨーク発東京行き ○○便で帰国します。

 今更、虫が良すぎるとは思うけれど、どうしても伝えたいことがあります。
 8年前、あなたに言えなかった事。
 会社で、再びあなたの前に立つ前に、どうしても話したい事が。

 急な事で申し訳なのだけど、成田で、あなたを待っています。

                                  NY空港より 滝川 司“

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