『めぐり逢えたら -朋美Side-』
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いつもと同じ木曜日、いつもと同じ日常、そのハズだった。
和美の口から、あの言葉を聞くまでは・・・。

「ねぇ、朋美知ってる?」

「えっ? 何?」

「ほら、来週、営業部長が定年退職で辞めるじゃない? その後任者の事。」

「えっ? 知らないけど、和美知ってるの?」

「うん、なにせ、その後任者直々に連絡もらったからね。」

「えっ? ってことは、和美の知ってるの人なの?」

「そうだよ、誰だと思う?」

なにやら嬉しそうな顔をしている和美の顔から、誰だろう?と考えてみるけれど
まったく思いつかない。

「ねぇ、じらさないで教えてよ、誰?」

「あのね、滝川さん、こっちに戻ってくるんだって!」

『えっ・・・。』

「何年ぶりかなぁ〜、ニューヨーク支社に転勤してからだから、8年ぶりくらいかなぁ?」

「そ、それ本当なの?」

「そうだよ、だって、今朝滝川さんからメールが入ったんだから。
来週から、東京支社の営業統括部長に就くから、よろしくって。」

和美が一体なにを言っているのか、さっぱり解らない。
滝川さんが、ニューヨークから帰ってくる? 滝川さんって、あの??
どうして・・・・、どうして、今になって・・・。

「朋美??」

「そ、そうなんだ。 ほんと、もうそんなに経つんだっけ。」

「そうだよ、だって、私が入社したときの課長で、2年目にニューヨーク支社に転勤したんだから。」

8年前・・・。 気が付けばそんなに月日が流れていたことに、今更ながら似驚いた。
もう、遠い昔の事のように思える。 それは・・・、和美がいまこうして傍にいてくれるから・・・。

「へぇ〜、でも、私は、あまり滝川さんの事知らないからなぁ〜、
 でも、統括部長に着任なんて、すごい出世なんだね。」

「そうだよねぇ〜。 でも、滝川さんなら、いずれそうなる気がしたなぁ〜。
 あの頃から仕事が出来る人だったから。」

和美が自分の事のように嬉しそうに話を続けるのが辛い。  和美に嘘を重ねる事が辛い。
和美の口から、滝川さんの名前が出るたびに、胸の奥がチクリと痛む。 これは、だまし続けた罰なのだろうか。

私は知っていた、和美が滝川さんに憧れていた事。 だからこそ、言えない秘密があった。

〜キーンコーンカーンコーン〜

「あっ、もうこんな時間だ。 さてと、午後も仕事しますかね。」

午後の始業のチャイムに救われる。 何事もなかったように笑みをうかべ、その場を濁した。
そして、職場の席に戻ると、パソコンに1通のメールが届いていた。


件名:久しぶり      差出人:T.Takigawa


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