『めぐり逢えたら -和美Side-』
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とても良い夢を見た、これは全て夢だ・・・、
とても心地の良い、とても優しい・・・、

汚れた欲を許され、そして最後の願いを叶えられた。
もう思い残すことはない・・・、そうでしょ?

頭の中で、誰かが私に問い掛ける。

誰?

霞のかかった靄の中から、声を掛けた主の姿が、少しずつ形を表す。

誰??

ぼやけた視界が晴れていうと、その先にあった姿は・・・、

!?!!っ

その視界の先にいたその人物は、紛れもない自分の姿だった。


“もう、終わりだよ、さぁ、もう行かなきゃ。”

そういった自分の姿をした者は、私に手をさしのべ、笑みを浮かべていた。


「はぁっ!!!  はあっ、、はあっ、はぁっ・・・。」

目が覚めると、部屋の電気が眩い光を発していた。

(酔っぱらって、そのまま寝ちゃったのかな・・・。)

少し頭が重い・・・。
どうやら、少し酒を飲み過ぎたらしい。

ふと、体中に何か暖かく柔らかいものを感じる。
片腕の上に、鉛のように重いものが乗っている。

??

視線を少し下げると、何か黒く細い多くの線が視界に入る。

なんだろう? これは・・・、髪の毛??

ぼんやりした頭の中で考えながら、体を起こそうとうとすると、柔らかいそれが、反動で向きを変えた。

その姿が視界に入った時・・・、

?!?!っ

あまりの事に、声さえ出ない。

そこには、何故か、何も身につけていない朋美が横たわっていた。

朋美が何でっ!?
どうして、裸でベッドに一緒に寝ているっ?!

そう考えた時、自分の状況に初めて気が付いた。

!?!!!っ

何故か私も何も着ていない。
な、何が! こ、これは、一体!?!!

声が口から飛び出すのを両手で必死に押さえた。



これは・・・、どういう事・・・?。

冷静に思い出す。 昨日、お酒を飲んだ後、何があったのかを。

いつものように、食べて、飲んで・・・。
テレビを見て、何気ない話をして・・・、それから・・・・、

その時、頭の中で、何かがフラッシュバックした。


(ん・・・・、 ぅぅん・・・。)

(むぅんん・・・、 ぅんん・・・。)

(うぅぅん・・・・、んぅん・・・・、ぃやぁ・・・。)

(どうして・・・。)

(はぁ・・・、か、和美・・・。)

(ぁぁっ・・・、和美・・・・。)



うわあぁぁぁっぁっ!!

怒号ににた悲鳴が口から発せられるのを両手で押さえつけるように塞ぐ。

夢の中の出来事、微かに頭の中に残っていた甘美な記憶。

あれは、夢の中の出来事だったはず・・・、そんな、そんなはずは!!

私は・・・、
私は、、朋美を、襲ってしまった?
強引に、力ずくで、朋美を抱いてしまった?

ベッドから飛び降り、あまりの事に、その場でしゃがみ込んでしまう。

朋美を傷つけた・・・、取り返しの付かない事をした・・・。

ごめん、ごめんなさい・・・、朋美・・・。

涙が溢れて流れ落ちる。
両手で顔を覆い、声を出さずに、声を殺して泣いた。

もう、朋美の側にいられない。
このままいたら、また、朋美を傷つけてしまう。

涙を拭い、力が抜けた体に力を無理矢理いれて、体を起こす。

ベッドの下に散らかった衣類を拾い上げ朋美の衣類だけをそっとベッド下に置いた。

朋美が熟睡していることを確認して、下着と、
朋美の体にいつも泊まりにきている時のTシャツとスウェットをそっと、起こさないように着させた。

そのまま毛布を掛け、ベッドの上の電気を消す。

時計を見ると、5時。

テーブルの上の食べ残しとグラスと、ワインのボトルを静かに片づける。

5:30

居間の電気を一番小さい電球にして、薄暗いオレンジ色の光の中で、
朋美宛ての手紙を書いた。



朋美へ

昨日は、酔っぱらっていたとはいえ、ごめんなさい。
こんな事をしておいて、謝って済むことじゃないと思うけれど
昨日の事は忘れてください。

昨日言おうと思っていたのだけれど、実は会社を辞める事にしました。
言おう言おうと思いながら言えなくてごめんなさい。

直接言わなければならないのに、手紙でごめんなさい。

どうしても外せない用事があるので、出かけます。
鍵は、申し訳ないのだけど、そのまま持っていてください。
それと、月曜から1週間会社を休みます。 一週間後、一度戻ります。
その時に、改めてちゃんと話をします。

こんな勝手な事をしてごめんなさい。

                                   早川 和美



封筒に朋美へと宛名を書き、その横に、マンションの合い鍵を添えた。

こんな事、許されるはずがない。
一週間後、朋美に合わす顔などない。

けれど、実家に戻り、全て実家に戻る準備が出来た後、
朋美に土下座して謝罪しよう・・・。

涙を流しながら、手紙をテーブルに置き、
そのまま、着替え、少しの着替えをバックに詰めて、部屋を後にした。

6:00

肌寒く、まだ薄暗い朝、駅のホームに立ち電車を待つ間、携帯の電源を切った。


卑怯だと解っていたけれど、私は逃げるように、朋美の側から立ち去った。


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