『めぐり逢えたら -和美Side-』
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日の高いうちに部屋に戻ったのは久しぶりだった。

そうだ・・・、そろそろ自分の荷物を整理しなきゃ・・・。

何も考えないように、やらなければならないことを始める。
何かし始めないと、朋美の事を考えてしまう。

さっきの見舞いを断られたことが、悪意がないと信じていても、
それでもショックだったことが後を引いている。
あと十数日しか一緒にいる時間がない。 朋美と一緒に過ごす時間がないのに・・・。

限られた日にちの中で、少しでも長く朋美との時間を作りたかった。
逢えなくなる日が来る前に、少しでも長く朋美と一緒に過ごしたかった・・・。

まったく、我ながら女々しいと思う。(いや、女なんだけど)
吹っ切るように、10年で増えた部屋の中の私物を広げ、少しずつ整理を始めた。

大学を出てから、就職の為に上京して、10年。
当初は、荷物を増やしたくなくて、極力荷物を持ってこなかった。

けれど、歳を重ねるたびに、時間を過ごしていく間に、
知らない間に、思い出のように物が増えていた。
こんな物も買った・・・、そういえば、これも買った・・・。

10年、あっという間で、当たり前のように過ごしてきた日々が、
こんなにも懐かしく思う日がくるなんて思わなかった。

仕事でイライラした日々があった、泣きたくなるほど嫌な事もあった。
笑った日々もあった、楽しんだ日々もあった。

泣きたかった日、苦しかった日、笑った日、楽しかった時、隣りには朋美がいた。

ふと、自分の腕にしていた腕時計が目に入る。
これは、クリスマスプレゼントに朋美が贈ってくれたもの。

そういえば、入社して間もない時に、
朋美に腕時計に関する心理テストをされた事を唐突に思い出した。




「ねぇ、和美? 和美にとって、腕時計ってどういう物?」

「腕時計??」

「そう。」

「ん〜・・・、そうだなぁ〜、 何も考えなくても自然としていて、
 当たり前のようにしてるけど、とても大切にしてる物かなぁ。」

「そうなんだ♪」

「それがどうかしたの?」

「腕時計に対する思いってね、その人が恋人に対する想いなんだって。」

「なにそれ?」

「心理テスト♪ 和美の恋人になる人は、とっても幸せになるだろうね♪」

「そんなの関係ないよ。 だって、そんな恋人なんて実際いないしー。」

「私ね、その心理テスト聞いてから、
 自分の大切な人には、プレゼントしたいって思うようになったんだ♪」

「へぇー、そうなんだ。 それじゃ、朋美の相手は、朋美から腕時計を貰えていいねぇ〜。」

「あっ、なんか、和美バカにしてる?」

「そんなことないよー、本当にそう思ったんだから。」

当時は、本当に、腕時計を贈られる朋美の相手が羨ましかった。
貰った時には思い出せなかった記憶。

思い出した今、自分が朋美に大切な存在と認識されていることが、今はズシリと重く、胸が痛んだ。


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