『めぐり逢えたら -和美Side-』
<<TOPに戻る

課長との話は10分ほどで済んだ。 もう少しで昼休みになる。
朋美は、今日体調を崩したと連絡があった。

そういえば、前にお見舞いに来てくれたときのお返しを何もしていない・・・。
会社にいる時間が残り少ないのであれば、少しでも朋美がしてくれた事へのお返しがしたい。

昼休みのチャイムが鳴ったと同時に、朋美の携帯に電話を掛けた。
しかし、何度掛けても、留守番電話になってしまう。

寝ていて気が付かないのだろうか?
それとも、病院にいて、携帯の電源を落としているのだろうか?

どちらか解らないので、メールで、今から見舞いにいく事を簡単に告げたメールを送信した。

その後、私は自分の座席に戻り、パソコンの電源を落とし、帰り支度を始めた。
更衣室で着替え、会社を出る前にもう一度電話しよう。

それでも出ないようなら、直接朋美の所へ向かおう。

自分の荷物を持ち、ロッカーで着替え終えてから、その場で再度電話した。
すると、次は繋がった。

「もしもし?」

「あっ、朋美? やっと出た。 具合はどう?」

「う、うん、ごめんね、心配掛けて。 もう大丈夫。」

「さっきメールしたんだけど、今からそっちに行ってもいいかなぁ。」

妙な間が空く。 今言ったことが、聞こえなかったんだろうか?

「朋美?」

電話がちゃんと繋がっているのか不安になり、呼びかける。

「ありがとう。 気持ちだけ受け取らせて。
 体調はもう本当にいいから。 心配かけちゃってごめんね。」

てっきり、迎えてくれるものだと思っていたら、思いがけない返事が返ってきて動揺する。

「で、でも・・・。」

「私のお見舞いなんかで、半日休み使うなんてもったいないよ。
 その休みは、今度一緒に映画でも観る時のにとっておいてくれる?」

「・・・・。」

どこか、遠回しに拒絶されているような、そんな気がする。
もしかしたら、私が行くと辛いほど、体調が悪いんじゃないだろうか?
そんな不安がよぎる。 

けれど、私に気を使いながらも断っている朋美の気持ちを無視してまで
家に押し掛けるような、強引な事はしたくなかった。

「ごめんね。」

「わかった。 それじゃ、今日は本当にゆっくりしてね。 また明日ね。」

「うん、明日は必ず行くから。 本当にありがとうね。」

「じゃぁね。」

電話を切った後、どうしようもない淋しさがこみ上げてきた。
着替え終えてしまい、今更職場に戻る気もなく、そのまま会社を午後から休み、帰宅した。


次のページへ>>