『めぐり逢えたら -和美Side-』
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翌日の火曜日、出勤する支度をして、家を出ると、携帯に朋美からメールが入る。
少し体調が悪いから1日休むと書いてあった。

あと数えるほどしか出勤しないと思うと、今日1日朋美に逢えないのは寂しい気持ちになったが
課長に退職する件を切り出す事を考えると、ちょうど良かった。

更衣室で着替え、職場に行き、課長がいることを確認する。
定時後に課長と話をしているのを見られると周りの目もあるので、
昼休みか、もしくは就業中に、少し時間をとってもらって話をした方がいいのか、
そんな事を考える。

就業開始のチャイムが鳴ったことを確認してかあ、課長が席にいることを
時々確認しながら、タイミングを計っていた。

11:30,昼前で、職場の人も仕事に集中している。
ふと、課長と目が合う。 今がいいかもしれない。

私は座席を立ち、課長の席に向かう。
その時の私の表情が緊張でこわばっていたのか、課長の机の前で声を掛けると
酷く驚いた反応だった。

「課長、ちょっとお話したい事があるんですが・・・。」

「どうしたの、急に改まって。 話し? ここじゃまずい話しなのかな?」

「はい、出来たら場所を変えて話しをしたいんですが・・・。」

「そう・・・、それじゃ、あっちへ行こうか。」

そういわれて、課長と職場を離れる。
廊下に出て、少し歩いた後、開いている小さめの会議室を見つけて、そこへ2人で入った。

「急に話ってなに?」

昼休み間近ということもあり、課長は単刀直入に話を切りだした。

「急で申し訳ないのですが、今月で会社を退社させていただきたいんです。」

「はぁ?? ど、どうして!! 急にどうしたの!!」

「実家の父が倒れたもので・・・、
 命の別状はないのですが、母もそれで精神的に参っていて、これを期に戻ろうかと。」

「どうしても?」

「はい・・・。」

「そうなのか・・・、ちょっと急すぎて、僕もどうしたらいいかちょっと解らないのだけど・・・。
 時間はないけど、少しずつこれから話をしていくようだねぇ・・・。」

「ご迷惑をおかけします。」

「急なことで、君も辛いだろうけど、ご両親の事じゃ仕方ないか。」

「すみません。」

「僕は、午後から会議があるから、明日から仕事の引継とかを話そうか。」

「解りました。よろしくお願いします。」

「うん」

「すみません、一つお願いなんですが、このこと、他の方にはしばらく黙っていてもらえますか」

「んー、解った。 当面は、他の者には言わないでおくから。」

私はお礼を言って、その場でうち合わせが終わった。 これで、辞めることが決まった。


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