『めぐり逢えたら -和美Side-』
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「それで、相談っていうのは、何かしら?」

何気ない世間話と、運ばれた上品な懐石料理を口にしながら、1時間ほど談話していて
不意に、会話がきれた時、滝川さんから切り出された。

「あっ・・・、えっと・・・。」

「何か悩み事があるのかしら?」

静かに猪口で日本酒を嗜みながら、伏せ目で訊ねられる。

さっきまでの穏やかな空気が一変して、重たい静まり返った空気が部屋中を占めていた。

「滝川さんは・・・、ご結婚されていないんですよね・・・。」

「えっ? えぇ、そうだけど、それがどうかしたの?」

「滝川さんは・・・・、自分の将来的な事で、悩んだ事とかないですか・・・。」

「将来的なこと・・・、そうねぇ〜、でも、それは具体的には、どういう事かしら?」

「滝川さんは・・・・、えっと・・・、あの・・・、ご両親の事を考えた事ありますか?」

「両親の事?」

「はい・・・。」

「それは、両親の事を気に留めているかっていう事?」

「あっ、えっと、それもあるんですが、両親の将来的な事を自分的にはどう考えているかという意味で。」

「自分が、両親の面倒を看るという意味?」

「はい・・・。」

「そう、両親の面倒の事ねぇ・・・、 んー、考えたくても考える必要がないのよ。」

「えっ?」

「あのね、私、両親から勘当されているの。」

「えっ! す、すみません・・・、知らなくて、失礼な事を・・・。」

「あっ、ごめんなさい、そんな気にしなくていいのよ。大した事じゃないから。」

「で、でも・・・。」

「いいのよ、血が繋がった両親でも、うまくやっていけない事もあるのよ。」

「・・・。」

「早川さんは、ご両親の事、好き?」

「はい・・・。」

「ご両親の将来の事を心配しているの?」

「はい・・・。」

「実家で、何かあったのかしら?」

私は、実家の父が倒れた事、母親がその看病で疲れ切っていた事、
一人っ子である自分は、大好きだった両親をこのまま放って置いていいのか
悩んでいることを全て打ち明けた。


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