『めぐり逢えたら -和美Side-』
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いつもと同じ様にお昼を和美と一緒に取る。
けれど、頭の中では、自分のこれからの事で頭が一杯で、自然と寡黙になってしまう。
私が黙っているせいなのか、朋美も何も言わずにいる。

これじゃいけない・・・、そう思いながらも、気持ちが思うように切り換えられない。
話題を何か作ろうと、滝川さんの名前を口にすると、何故か、朋美の顔色が一瞬曇った。

「ど、どうかしたの?」

「えっ? あっ、ごめん。 今他のこと考えていたから・・・。 ごめんなさい。」

「あっ、いや、ごめん。 なんでもない。」

何を口にしてもぎこちない。
自分に原因があるのが解っている。 だから、余計に何を離しても、空気が重くなるような気がして、
自分でもどうしていいのか、わからなくなる。

目の前に朋美がいるのに、とても遠くに感じる。
手を伸ばせばすぐに触れられるそこにいる朋美。

でも、私が会社を辞めてしまったら?
朋美の傍にいられなくなってしまったら?

今まで、当たり前のようにこんなに近くに居られたことが、もうすぐ遠い過去になってしまう。

朋美・・・。

向かい側にいる朋美を見ると、朋美もどこか遠い目をしている。
いっそのこと、さらってしまいたい。
朋美の手を引き、ずっと、ずっと自分の傍においておきたい。

朋美を、自分のものにしてしまいたい・・・。

ダメだ・・・、そんな事は叶うはずがない。 
たとえ、朋美を力ずくで自分のものにしても、朋美の心は手に入らない。

そんな事をしたら、朋美の笑顔は失われてしまう、朋美は壊れてしまうだろう。

いつかは、こんな日がくること思っていたけれど、こんなにすぐだとは思わなかった。

「和美? 和美???」

「えっ? な、なに?」

「どうしたの? 何かずっと考え込んでいるみたいだけど・・・、どうかしたの?」

「えっ? い、いや、別に?」

突然朋美に上の空だったことを指摘されて焦ってしまう。

「大丈夫? 和美、顔色悪いわよ?」

疲れと寝不足と、いろいろな事への不安で押しつぶされそうになり、顔に出てしまっていた。

「ごめん、少し寝不足なだけだから。 大丈夫だよ。」

慌てて気付かれないように、悟られないように、なんでもないように取り繕う。

「ね、ねぇ・・・、和美・・・。」

私の違和感に何か感じたのか、不安そうな朋美の声が聞こえてくる。

「なに?」

なんでもないように聞き返すと、朋美は、なんでもない。と、翳りのある笑顔で口をつぐんだ。


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