『めぐり逢えたら -和美Side-』
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いつもよりも早い時間にセットした目覚ましが鳴り、目が覚める。
久しぶりに熟睡したことで、すっきりと目覚めたけれど、体がうまく動かせない。

起きなきゃ・・・。

引きずるように体を起こし、シャワーを浴びる。
熱めのお湯を頭から被り、どうにか体の動きを取り戻す。

シャワーを浴び終わり、熱い珈琲を飲んで食パンをかじる。
いつもと同じように、いつもと変わらぬ月曜日なのに、
これがもうすぐ終わりを告げることを頭の中で理解していた。

いつもと同じように出勤する。 ロッカーで着替え、朋美と朝の挨拶を交わす。
これも、いつもと同じ。 どこか朋美の笑顔に違和感を感じたけれど、対して気にしなかった。
それよりも、自分がいつもと同じ様に笑えているかが心配だった。

職場の朝礼に出ると、課長が営業部全員に声を掛ける。
職場の中央に呼ばれ集まると、前の中央には、8年ぶりの滝川課長が立っていた。

「今日から、営業統括部長で着任します、滝川です。 先週までは、NY支社におりました。
 久しぶりの日本ですし、まだこちらに来て慣れない事が多いと思いますが、どうぞよろしく。」

人の上に立つべき人というのは、どこか生まれ持ったオーラが見えるような気がする。

滝川課長と初めて出会った時も、女性課長でありながら、
何かに惹きつけられるようなオーラがあり、とても憧れた。

この人が戻ってきた今、この人の下でもっと色々学びたかった。

けれど、再会できたというのに、もうすぐここを去らねばならない。 それが少し残念に思う。

朝礼が終わり、厨房に自分の珈琲を淹れに行こうとしたとき、背後から声を掛けられた。

「早川さん、久しぶり。」

「滝川課長・・・、あっ、いえ、部長。 お久しぶりです。」

「随分会わないうちに、大人の女性になったわね。 新入社員の頃が懐かしいわ。」

「そんな事言わないでくださいよ。 でも、こうしてまたお会いできたのが嬉しいです。」

「そう? 私もこっちに戻ってこれて嬉しいわ。
 これから色々教えてもらうこともあると思うけど、よろしくね。」

あの頃よりも、一層なにか人を惹きつけるカリスマ性を身につけている滝川部長が、
少し遠い人のように感じた。

この人が、私の立場だったらどうするのだろう・・・。 ふと、そんな事を考えてみる。

この人の揺るがない真っ直ぐした瞳が羨ましい。 私は改めて自分の弱さを思い知らされた。


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