『めぐり逢えたら -和美Side-』 |
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いつか、この日がくることは解っていた。 解っていたけれど、気が付かないフリをしていた。 いつまでも、当たり前のような幸せな日々を過ごしたかったから。 けれど、この日が来た今、 私は残酷な選択を迫られる。 『めぐり逢えたら -和美Side-』 いつもと同じ木曜日の朝、会社でメールをチェックすると懐かしい人からメールが来ていた。 新入社員の時の課長だった滝川さん、その人からだった。 メールを開いて読んでみる。 来週ニューヨーク支社からこっちの東京支社に転勤になるとの事。 定年退職する統括部長の席に就くこと、そして、またよろしくと簡単に書いてあった。 滝川課長が部長、しかも統括部長として帰ってくることに驚いたけれど、嬉しくもあった。 入社してわずか2年弱くらいしか、滝川課長の下で働いていないけれど、憧れの上司だった。 とても仕事が出来る人で、新入社員の私の事をとても良く面倒見てくれた。 その人が帰ってくることと、自分を覚えてくれていたこと、メールをくれたことがとても嬉しかった。 だから、あまり接点がない朋美にも、嬉しくてその話しをしてしまう。 朋美はキョトンとしていたけれど、私はかまわず嬉しさを口にしていた。 だから、気付かなかった。 その時、朋美の笑顔の裏に隠された本当の気持ちに。 夜、いつもの自分の部屋に帰宅し、夕食を取ったあと、寝るまでの時間をくつろいで過ごす。 風呂に入り、布団に入ろうとした深夜に、突然自室の電話機が鳴り響く。 こんな時間に? 浮かんだ疑問から、心がざわめく。 出る前から、何か胸騒ぎがして、嫌な予感が走る。 「もしもし?」 その夜、私は一睡もできず、始発の列車で家を飛び出した。 いつかは来ると解っていた日が、ついに来てしまった現実。 その事実から、目を逸らすことができない。 新幹線の中で、いろんな記憶が頭の中を巡る。 (朋美・・・。) 目的地までは2時間かかる。 眠れはしないと解りながらも、目を閉じる。 瞼の裏に、朋美の顔が浮かんだ。 |
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