『めぐり逢えたら -最終部-』
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【和美Side38】

朋美の病室へ向かう。
そこは2人部屋だが、今は1人との事だ。

ドアの前に立ち、ノックをする。

「どうぞ。」

懐かしく、前まで当たり前のように耳にした声が聞こえてきた。

静かにドアを開けると、朋美と目が合った。

「か、和美・・・。」

「朋美・・・。」

朋美の隣りには、お母さんと思われる人が付き添っていた。

「お母さん、会社の同期だった和美。 前良く話ししたでしょ。」

「あぁ、あなたが早川さんね。 娘がいつもお世話になっています。」

「いえ、こちらこそ、ご挨拶が遅れました。」

「お母さん、和美と話しをするから、今日はもういいよ。」

「そう?」

「うん。」

「それじゃ、また明日くるわね。」

「ありがとう、また明日ね。」

「それじゃ、早川さん、ご挨拶しか出来なくてすみません。」

私は軽く会釈をして、お母さんを見送った。
部屋には、私と朋美の2人だけになった。


「来てくれてありがとう。」

「うぅん、調子はどう? 話を聞いてびっくりした。」

「心配かけてごめんなさい。
ただの胃潰瘍なのよ。 あと1週間くらいで退院できるんだけど。」

「そ、そうなの・・・。」

朋美には、病状が知らされていないのだと思った。
だから、私も知らない振りで話を続けた。

「和美・・・、滝川さんから聞いたのだけど、結婚・・・、するんだよね。」

「朋美・・・。」

「あのね、もう今日で終わりにするから。
ごめんね、前に強引にキスしちゃって。 その事を、謝りたかったの。」

「朋美・・・。」

ふと、朋美の視線が、私の目から顔の端へと移った。

「和美、ピアス付けてくれてるんだ。 嬉しい・・・・。   でも・・・、」

一瞬朋美の言葉が途切れた。

「えっ?」

「でも、そのピアス返して貰ってもいいかな。」

「えっ? 何で?」

「そのピアスね、石言葉があるの。」

「石言葉??」

「うん、そのピアスの石はね、“エンジェルスキン・コーラル”っていう名前なの。」

そういって、ゆっくりと上半身を起こすと、朋美は静かに私の耳のピアスにそっと触れた。
触れられた耳が、一瞬にして熱く熱を帯びた。

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