『めぐり逢えたら -最終部-』
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【朋美Side33】

涙が止まらない。
和美の名前を耳にした途端、溢れる想いと、拒絶した悲しみで、涙が止まらなかった。

「うっ・・・、うぅっ・・・。うぅぅっ・・。」

両手で顔を覆い涙を隠した。

「そう・・・、逢ったのね・・・。」

私の態度を見て、滝川さんは、和美に会った事を悟った。

「早川さんと、ちゃんと話をしたの? 気持ちを伝えたの??」

一番痛い、聞かれたくない事を突かれる。

「うっ・・・、全て、話しました・・・、で、でも・・・、きょ、拒絶されました。」

それだけ伝えるのが精一杯だった。
今日起きたことを、自分の口から出した時、その時の情景を思い出し
更に、涙が溢れ、止まらなかった。

「そう・・・。」

滝川さんは、それ以上何も言わなかった。
ただ、何も言わず、何もせず、ただ、そこに座っていた。

「朋美、これは??」

テーブルの上に置いていた、和美から貰った懐中時計が、滝川さんの目に留まった。

「そ、それは・・・、最後の日に・・・、和美が・・・、くれたもの・・・です・・・。」

「そう・・・。少し見せてもらっていいかしら?」

そう言いながら、滝川さんが懐中時計の蓋を開け時計を見る。
止まらない涙を抑えながら、その様子をずっと見ていた。

滝川さんの視線が、ふと蓋の裏側に移った。

「これは・・・、朋美、これは、本当に最後の日に貰ったの??」

「はい・・・。」

「何か他に、早川さんは、何か他に言ってなかった??」

「いえ・・・。 ただ、手紙が一緒に添えてありましたが・・・。」

「その手紙には、何か特別な事が書いてなかった??」

突然、厳しい口調で、滝川さんに問いつめられる。

「特別な事って・・・、ただ、
”いつか、想いが届くこと、幸せになることを心から願って”
と、書いてありましたが・・・。」

それを聞いた滝川さんの表情が、クッと厳しくなった。

「ごめんなさい、今日はこれで失礼するわ。
辛いのは解るけれど、明日はきちんと会社にくるようにね。」

言われなくても解っている。

「解っています。」

ここでいい、と言って、滝川さんは玄関を後にした。

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