『めぐり逢えたら -最終部-』
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【和美Side34】

実家に戻るなり、私は部屋に引きこもった。

両親に、どうかしたのか?と心配されたが、
ちょっと人に酔っただけだと話し、しばらく休むからと伝えた。

ベッドに倒れ込み、朋美と触れた唇を指で触れる。

濡れた温かい唇。

キスの間、息が出来なかった。
全てを、朋美に吸い尽くされているように、苦しかった。
その変わりに、朋美の熱い想いだけが私の中に注がれた。

朋美は、私の事を想ってくれていた。

涙が溢れた。

嬉しくて、ただ、嬉しくて涙が止まらなかった。

私が想うように、朋美もまた、自分を想ってくれていた。
ただその事実だけが、喜びとなり胸の中に広がった。

嬉しい・・・。

もういい、これで十分だ。

自分が想ってくれたように、朋美も自分を想ってくれていた。
この現実が、これからの自分を慰めてくれる。

十分に、もう十分すぎるくらいに幸せだった。

脳裏で、甘い誘惑が聞こえてくる。

朋美も、自分を想ってくれているのだから、もういいじゃないか。
朋美の気持ちに答えて、2人で幸せになればいい。
何を迷う事がある。 お互い気持ちが通じているのなら、それが幸せだ。

思わず、その誘惑に負けそうになる。

携帯を取り出し、朋美の番号を表示させる。
誘惑に取り込まれようとした時、冷静に現実を告げる声が響く。

彼女を自分の人生に巻き込んでいいのか?
これから、両親がどうなるか解らないのに。
自分の両親の苦労を、愛する人に一緒に背負わせるのか?
彼女は、まだこれから自由がある人だ。
好きだからこそ、彼女の幸せを考えろ。

携帯を閉じ、ベッドに投げ出す。

そうだ、私と朋美とは道が違う。
自分の人生に巻き込んではいけない。

起きあがり、バックの中に入った朋美からの贈り物を取り出す。

包装紙を外すと、小さな小箱が出てきた。
恐る恐る開けると、そこには、小さな肌色とオレンジの中間の色をした
小さく丸い石のついたピアスが2つ入っていた。

ありがとう、朋美・・・。

このピアスを想いの証として、ずっと朋美の幸せを祈ってる。

以前、付けていたピアスの跡に、朋美からもらったピアスを付ける。
このピアスを付けただけで、朋美の想いが側にあるような気がして嬉しかった。

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