『めぐり逢えたら -最終部-』
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【朋美Side31】

和美がタクシーで去った後も、私は道で、呆然と立ちつくしていた。
どのくらいそうしていたのか、わからない。

マンションから出てきた車にクラクションを何度も鳴らされて
初めて我に返った。

和美に拒絶された。

その現実が、脳裏に刻み込まれる。

朦朧と、自分の部屋に戻る。
ドアを開け、玄関に入る。

玄関からリビングへの廊下に目を止める。

ここで、さっき和美に強引にキスをした。
指でゆっくりと自分の唇をなぞる。

和美に触れた唇、全ての想いをそそぎ込んだキス。

けれど・・・。

和美の見開かれた驚愕の表情。
震えながら、両手で抱きしめ怯えていた姿。

あれは、拒絶。

そのまま、リビングに戻った。

そこには、さっきまでいた、和美が口にしていた珈琲カップがあった。

ソファーの下に座り込み、和美の唇が触れていたカップを指でなぞる。

和美・・・。

もう逢えないかもしれない。
今日が最後のチャンスなのかもしれない。

だから、我慢できずに、とうとう自分の想いを和美に告げた。

けれど、怯えた表情の和美。

そうだ、和美が私の気持ちに答えてくれるはずがない。
和美は、私とは違うのだ。

解っていたはずなのに、どうして、我慢できなかったのだろう。

微かな期待があったから?

もしかして、和美も、自分を想ってくれていると、どこかで期待していた?

あの日、お酒に酔っていたとはいえ、和美が私を抱いたから?

でも・・・。
そんなはずは無かった。

そんな奇跡は起こらなかった。

和美は、私に恐怖し、怯え、そして拒絶したのだ。

全てが終わってしまった。

もう、和美と会うことはない。

分かり切っていた結末に、呆れすぎて、もう涙も出なかった。

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