『めぐり逢えたら -最終部-』
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【朋美Side30】

見張っていた会社に、予想通りの時間に現れた和美を強引に部屋に連れて帰る。
言いたいことは、山ほどあった。
伝えたい言葉は、溢れるほどあった。

それでも、和美は何も言わない。
私が、携帯の事を問いつめても、目を逸らし、きちんと話しをしない。

我慢が出来ず、和美の手を握る。
お願い、ちゃんと答えて。

「ごめん、朋美、ちょっともう時間がないから・・・。」

握った手が一瞬にして硬直するのが解る。
と同時に、和美は立ち上がり、玄関へ行こうとした。

「和美!!」

また、私から離れようとする。
我慢できなかった。

強引に和美の腕を掴み、ある力全部で和美の身体を引っ張り
玄関前の廊下に押しつけた。

ドタンッ!

「あぅっ・・・。」

私の力の反動で、和美の身体は壁にたたきつけられる。
突然の痛みに顔を歪める和美の両手を壁に押しつけ、
全身で和美に覆い被さる。

「はっ!! えっ???」

目を開けた和美は、何が起きているのか解らないでいる。

「和美、私の好きな人が誰なのか教えてあげる。」

今まで押さえつけて、我慢していた想いが、
眼前にある和美の顔を見て、破裂した。

「あっ、いや、私は別・・・。んぅっ・・・。」

和美が何か言おうとしたその唇を、自分のそれで塞いだ。

「んっ・・・、ぅんん・・・!!」

強引に和美の唇を奪う。
和美の唇から、声が漏れる。

今まで、キスした事は何度もあった。
あの日、酔いつぶれた勢いで、和美に全てを打ち明けた日、
あの日、和美に抱かれたあの夜。

けれど、お互いの意識が完全に覚醒している時にキスをするのは、初めてだった。
不意に唇を離す。

「はぁっ・・・。」

「私がずっと好きだったのは・・・、和美、あなたなの。」

目の前にある和美の瞳を見つめならが、
溢れる想いを胸に、和美に告白をした。

「と、朋美・・・、むぅっ・・・。」

それを聞いて、和美が目を見開く。
そして、何か言おうとするその唇を、もう一度強引に塞いだ。

今まで我慢して、押さえていたありったけの想いを
この唇から和美に流し込むように、強く、強く唇を塞いだ。

(和美・・・・、和美・・・・。)

唇を重ねながら、何度も、何度も和美の名前を心で呼ぶ。

ずっと、ずっと好きだった。
ずっと、和美の事だけを想い続けた。

和美の身体から力が抜け、壁から崩れ落ちそうになるのを、両手で支え、
なおも、唇を離さなかった。

「んっ・・・、ぅんん・・・!!」

長く唇を重ねていた時、和美の声が唇の隙間から漏れ
両肩に、和美の手が置かれた。

その直後、突然強い力で、肩を押し返され、突き飛ばされた。

突然の事で、身体に踏ん張りが聞かず、身体が仰け反り、
反対側の壁に激突し、しゃがみ込んだ。

「はぁっ、はぁっ・・・。」

瞳を潤ませ、うつむきながら、和美は両手を交差させ
震えながら自分の身体を抱きしめていた。

そして、ギュッと唇を噛みしめ、驚愕の表情を浮かべている。

「か、和美・・・。」

突然突き飛ばされた事、震えながら驚愕した表情で
愕然としている和美。

これは、拒絶。

和美に拒絶されたと解った時、全身に稲妻が落ちたように激痛が全身に走る。

その刹那、和美が自分の鞄を握り、部屋を飛び出した。

(和美っ!!)

咄嗟のことで、追いかけようと思って立ち上がると、膝に力が入らない。

和美!! いかないで、お願い!! 行かないで!!

力のない膝を叩き、無理矢理身体を起こして、ふらつきながら玄関を出る。

(和美・・・、和美・・・)

通路の壁を伝いながら、急いでエレベータのボタンを押す。
来たエレベータに乗り、まだ近くにいることをただ祈る。

なんとかエントランスから外へ出た時、大通りの手前に、和美の背中を見つけた。

いたっ!!

ありったけの力で、和美の背中を追う。
なのに、急ぎたいのに、身体がどこかスローモーションのように、ゆっくりとしか進まない。

「和美っ!!」

和美の名前を思い切り叫んだ時、和美の姿は、止まったタクシーに吸い込まれ、姿を消した。

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