『めぐり逢えたら -最終部-』
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【和美Side33】

頭が痺れ、全身に甘美な何かが流れ出す。

朋美が好きだった相手は、私??
ずっと、ずっと長い間、朋美が想い続けていたのは、私?

痺れる頭の中で、朋美の甘い囁きがエコーする。

朋美は自分を想っていてくれた。
自分と同じように、私が朋美を好きなように・・・。

力の入らない両手を朋美の肩に掛ける。
抱きしめようと、その手に力をいれようとしたその時、

頭の中に、何かが引っかかる。
脳裏に両親の顔が浮かぶ。

はっと、我に返る。

「んっ・・・、ぅんん・・・!!」

両手に渾身の力を込め、朋美の肩を押し返す。

力強く押し返された朋美の身体は、反り返り、
反対側の壁にたたきつけられる。

「はぁっ、はぁっ・・・。」

両手で、自分の身体を抱きしめる。
ダメだ、このままだと、朋美を抱きしめてしまう。
離れなければ・・・、これ以上朋美の側にいたら、何をするか解らない。

自分の想いに震え、歯を食いしばり、弾んだ呼吸を繰り返す。

「か、和美・・・。」

突き飛ばされた朋美は、目を見開き、しゃがみ込んで固まっている。

早く動かなきゃ、身体に力がまだ入らない。
一刻も早く、ここから立ち去らなければならない。

この足動けっ!! お願い、動いて!!

なんとか身体を持ち上げ、壁により掛かりながらも立ち上がる。
床に落としたバックを握りしめ、懇親の力で床を蹴って玄関へ向かった。

「和美っ!! 待ってっ!!」

早く、お願い、早くここから離れて!!
遠くへ、早く遠くへ、早くっ!!

ふらつきながらも部屋の外に飛び出し
通路を駆け出す。

エレベータのボタンを連打し、丁度来たものに飛び乗った。
マンションのエントランスに飛び出し、道路へそのまま出る。

身体がふらつく。
このまま駅までは持たない。

朋美が追いかけてくるかもしれない。
大通りに出た時、偶然通りかかったタクシーを拾った。

「和美っ!!」

どこか、名前を呼ばれた気がしたが、そのままタクシーに乗る込む。
行き先を告げた時、バックミラーに、小さく朋美の姿が映ったが、構わず車を出させた。

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