『めぐり逢えたら -最終部-』
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【和美Side28】

月曜の朝、9時に家を出た。
家を出る前に、会社の総務部に電話をして、今日午後に行く事を伝える。
そして、必要な書類などを確認して電話を切った。

マンションの管理人さんにも電話をして、今日の11時頃に伺うことを連絡する。

電話を切り、家を出た。

大学生などが車内に多く乗っている電車に乗る。

窓の外の流れる景色を見ていると、まだ1週間しか経っていないのに
見慣れた風景が懐かしく思えた。

11時、住んでいたマンションの管理人室のブザーを押す。

「はーい!」

しばらくすると、管理人さんが現れた。

「あら、早川さん。 今日ははるばるご苦労様。」

「いえ、まだこちらの挨拶もしていませんでしたから。」

「それじゃ、お部屋を見せていただけるかしら。」

「はい。」

1週間振りに、かつての自分の部屋に入る。

家具も何もかも無くなったその部屋は、もはや自分の知っている部屋ではなかった。

「もう、お掃除も済まされているんですね。 これなら問題ないと思います。」

「あっ、はい。」

「多分、敷金はそのままお返しできると思います。
振り込みについては、また改めて会社の方から連絡があると思います。」

「解りました。 ありがとうございました。」

どうやら、敷金の返却査定を管理人さんがして、それをマンションの持ち主の
業者が後で金額を返却してくれるらしい。

「いえ、10年使っていただいた割には綺麗に使用していただけてますから。」

「そうですか。 そういっていただけると嬉しいです。」

「あっ、そうそう。 忘れていましたが、この間、早川さんが引っ越された日の午後、
お友達が訪ねにこられていましたよ。」

「えっ??」

引っ越した日の午後?
ここに来る人といえば・・・、朋美??

「な、何か言ってましたか・・・?」

恐る恐る聞いてみる。

「いえ、とても残念そうな顔をしてらっしゃって、そのままお帰りになりましたよ。」

「そうですか・・・。 教えて下さってありがとうございます。」

礼を言ってから、この部屋の鍵を全部返した。
これで、まずはマンションの解約手続きは全て終わった。


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