『めぐり逢えたら -最終部-』
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【朋美Side27】

週が明けて会社へ行く。
いつもの時間、更衣室に入り、制服に着替える。

着替え終わる頃、いつもなら・・・

(朋美! おはよう〜!)

聞き焦がれるその声が、もう耳に入る事はない。

ガチャッと、ドアが開く音で耳が一瞬凍り付く。
頭の中では解っているはずなのに、無意識に心が和美の姿を求めている。

「おはようございます。」

開かれるドアから入ってくるのは、その人ではなかった。


来るはずがないのだ。
鞄の中にそっと手を入れ、残された銀の懐中時計をぐっと握りしめる。

心の中で思わず和美の名を呼ぶ。

けれど、答えが返ってくるはずもない。

まだロッカーに残されている和美の名前を一瞬見てから、更衣室を後にした。

昼休み、薄曇った空の下で、いつものようにお昼を食べる。
けれど、隣りには、あの人はもういない。

人がいない静けさに、改めて自分が1人であることを思い知らされる。

手に持ったおにぎりは、一口しか口にできなかった。
目を閉じれば、少し前の記憶が流れ込んでくる。

ほんと1ヶ月前までは、一緒にいるのが当たり前で、
なにも考えなくても、それがいつまでも当たり前のように続くと信じていた。

なのに、時の流れは残酷で、こんなにも早く、現実を突きつけられた。

私と和美の人生の岐路。
和美は自分の道を歩きだした。

そして私は・・・。

これから私は??

自分はこの先どうするのか、どうしたいのか・・・。

考えなければならない現実が目の前にあるのに、
私は岐路の座り込み動けない。

私は、一体どうしたい?

解らない・・・。

お茶の缶を握りながら、目を閉じ考えながらも答えはでない。

「ここ、いいかしら?」

背後から突然声がした。
慌てて顔を上げると、滝川さんがベンチの脇に佇んでいた。

「ここ、いいかしら。」

もう一度言い直すと、私が返事をする前に、滝川さんは私の横に座った。

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