『めぐり逢えたら -最終部-』
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【和美Side26】

実家に戻って、1週間が過ぎた。
クリーニングの終わった制服と、会社の残りの手続きを、
一体いつ行こうかと悩んでいた。

携帯は、荷物の中から充電器を出して、充電しているものの、電源は入れなかった。

考えあぐねている時、週末に親戚がやってきた。
父方の伯父夫妻だった。

最初はてっきり、父に会いに来たのだと思っていた。
軽く挨拶をして、本屋に求人雑誌での買いに行こうと思っていた時、
不意に伯父さんに声を掛けられた。

「和美ちゃん、ちょっといいかな。」

呼ばれて、客間に入ると、父と母が、なんとも複雑そうな顔をしている。

「何か?」

「和美ちゃん、物は試しだと思って、一回見合いしてみんか?」

「はぁ??」

「いやな、世話になっとる会社の社長の奥さんから、どうしてもって頼まれてなぁ。」

「はい??」

「お相手は、その奥さんの一人息子さんや。 歳は、確か35だったか。」

「どうして、それが私に??」

「いや、和美ちゃん丁度こっちに戻って来とるし、急なことで、他に人が見つからんでな。
 義理でいいんで、悪いんだけど、ちょっと顔貸してもらえんかなぁ〜。」

見合い?? はい?? この私が見合い??

「そりゃ、逢って、和美ちゃんがその気になれば、もちろん話しは進めるし、
 その気が無いなら、帰ってから、すぐに断ってもらっていいから。
 いや、本当に、義理の見合いだから、固く考えんでええから。 なっ? どうだろ?」

見合いなんて、冗談じゃないと思いつつ、両親の顔色を伺うと、
私の顔色を2人で、心配そうに伺っているのが解る。

密かに、試しでいいから、してみないだろうか・・・と思っているのだろうか。

「・・・・。 解りました。 但し、本当にその場だけですからね。
 私、まだ結婚なんて、そんなつもりないんですし。」

「おっ! そうか!! そりゃ助かる!!
 ほんと、すまんな。 急に変な話し持ってきてしもうて。
 そいじゃ、先方さんと日取りの打ち合わせしてから、決まったら連絡するで。」

伯父さん夫妻は、嬉しそうに帰っていった。

「和美、おまえ、いいのか?」

父が心配して私の胸中を探りにくる。

「大丈夫でしょ。 逢うだけなんだし。 伯父さんの顔も立てなきゃいけないんだろうしね。」

「そうか・・・。 帰ってきた早々、すまんなぁ。」

「いいよ。 一度見合いを体験してみるのも経験だし。」

帰ってきた早々、家の義理付き合いにかり出されたが、別にあまり気にはならなかった。

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