『めぐり逢えたら -最終部-』
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【和美Side25】

(疲れた〜・・・・。)

荷物を全て積み終わり、業者を見送ったのが、11時。
その後、簡単に部屋の拭き掃除、窓掃除、風呂場、トイレの掃除をして、
最後のゴミを片づけた。

切りよく片づけ終わった時、時計は2時を過ぎていた。

「10年間、お世話になりました。 ありがとう。」

長年済んだ住居に別れを告げて、部屋を出た。

駅までの道のりを、懐かしむように目に刻み込む。

駅に着き、電車に乗ろうと駅の改札へ行くと、構内放送がかかっている。

「ただいま、○○方面 ○○駅にて、人身事故があり、電車の運転を見合わせております。
 お急ぎの所、皆様には大変ご迷惑をおかけしておりますが、もうしばらくお待ち下さい。」

電車がまだしばらく動きそうにない。

仕方ないので、駅から出て、コンビニで暇つぶしようの雑誌を買い、
近くの喫茶店で時間を潰すことにした。

喫茶店で、珈琲を飲みながら、ふと、家に連絡するのを忘れていた事を思い出す。

携帯を取り出し、電源を入れる。

??

電源が入らない。

あぁ、そうだ、充電器を引っ越しの為に片づけてしまって、ここ2日ほど
充電していなかったんだっけ。

2日充電しなかっただけで、もう切れるなんて、携帯もそろそろ機種変更した方がいいのかな。

そんな事を考えながら、珈琲を飲む。

実家には、電車が復旧して、乗る前に連絡をいれればいい。

買ったばかりの雑誌を読みながら、珈琲を飲み、緩やかな時間を過ごす。


1時間が過ぎた頃、喫茶店を出て駅に向かうと、電車が復旧していた。

駅で切符を買い、構内の公衆電話から実家に電話を掛ける。

「あぁ、私。 電車が止まって少し遅れたけれど、今から出るから。」

それだけ言って切る。

あと何回ここに来ることがあるだろう。
会社の退職後の手続きと、マンションの完全引き渡し、そのくらいか。

会社に制服を返したり、退職金の手続きや、その他総務への届け出などは1日で終わる。

会社に行く・・・、朋美には逢いたくない。

できるだけ、人目がない時間に会社をそっと訪れよう。
元の職場の人なんかに見つかったら、それこそ隣りの課の朋美にばれるし。

朋美の事を思い出しても、不思議と心は穏やかだった。

心の中も、頭の中も、和美への気持ちは、自分なりにうまく消化できたと感じた。

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