『めぐり逢えたら -最終部-』
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【朋美Side24】

和美が隣りの席から消えて、どのくらいたったのか、
ようやく、涙が止まり、涙で腫れた目をハンカチで押さえて顔を上げると、
店内には、客がもう2人ほどしかいなかった。

顔を上げて気が付いた。

私と隣りにいた和美の間のテーブルの上に、小さな紙袋が置いてあった。

どこかで見たような?

その時は、店内が薄暗くて、目が腫れていて、よく見えなくて解らなかった。

それでも、和美が私に置いていった物だということは解ったので、それを
持ち、店を後にした。


朋美に誘われた会社最後の夕食だったのに、
最後は、最悪だった。

我慢できなかった。

和美が、あんな事を言ってきたのが。
和美が、私の気持ちを知らずに、滝川さんの事を言ってきたのが。

とても悲しかった。
とても辛かった。
とても・・・、悔しかった。

その日は、帰りに自分の家で飲み直し用にコンビニで買った酒類を煽り
今日の出来事を、最後に起きた事を思い出し、泣きながら飲み続けた。

全て忘れたかった、夢の中の出来事だと思いたかった。


翌朝、飲み過ぎの頭痛で目が覚めた。
どうにも、こうにも頭が痛くて、寝ているのも辛かった。

頭を抱え、起きあがる。

飲み散らかした酒類の缶が、ひどく不愉快だった。

頭痛薬を飲み、リビングでしばらくぼーっと惚ける。

目がどこか重たい。

そっか、昨日ずっと泣いていたんだっけ。

泣いていた理由は・・・。

忘れたかったのに、昨晩の事を思い出す。
思い出しただけで、また涙が溢れる。

体中に力が入らない。

重く鳴り響くような頭痛と、昨日の悲しみが混在して
どうにも体が言うことが聞かなかった。

天井を見上げると、ただ、涙が重力にしたがって、
頬を伝って、流れ落ちるのを微かに感じた。

なんて最後の夜だったんだろう。
こんな別れ方をしたら、もう和美と逢えないような、そんな気がした。

10年間、一緒に過ごしてきた私たち。
あれだけ激しく言い合ったのは、知り合ってから初めてだった。

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