『めぐり逢えたら -最終部-』
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【朋美Side23】

「な、なに?? 黙っていた事って・・・。」

「朋美、去年、うちに来て2人でワインを一杯開けて、酔いつぶれた時の事、覚えてる?」

ワインで酔いつぶれた??

あっ?!
あの日の事??

「あっ、えっと・・・、う、うん。」

覚えている。
忘れられる訳がない。

あの日、私は酔いつぶれたとはいえ、誰とは言わないけれど
長年片思いをしていた事を和美に全て打ち明けてしまった日。

そして、勢いに任せて、初めて和美に、キスしてしまった日。

「あの日、私、お酒に酔って、何を聞いたのか覚えていないって言ったんだけど。」

そう、あの日の翌朝、和美にどこまで覚えているかを聞いた。
けれど、和美は、何も覚えていないと言っていた。 だから安心していた。

「あのね、実は、あの日の朋美の言葉、全部覚えているの。」

「えっ? えぇぇぇっ??」

「ごめんね、朋美が気にしてそうだったから、覚えてないって言ったの。」

「か、和美、な、なんで!」

「あの日、朋美が言った事、朋美が、ずっと想い続けている人がいる事、
聞いたこと、全部覚えてる。」

「あっ・・・。」

「朋美、これから言うことを、ちゃんと聞いて欲しいの。」

「えっ??」

「朋美、私はもう朋美のそばに居て上げられない。
 でも、私が実家に戻ると同時に、滝川さんが戻ってきた。
 これってね、偶然かもしれないけど、多分必然だと思う。」

「か、和美?? な、なにを??」

「朋美、滝川さんはいい人だよ。
 今でも、本当に、朋美の事を大切に想ってる。」

「何? 何を言っているの?」

「滝川さんが、これからは、側にいてくれるから。
朋美に好きな人がいるのは知ってる。
でも、ほんの少しでもいいから、滝川さんの事、気に掛けて欲しい。」

「ど、どうして・・・、どうしてそんな事を言うのっ!!」

「と、朋美???」

どうして、そんな事を言うのだろう・・・。

どうして、滝川さんの事を私に言うのだろう・・・。

どうして、どうして、和美は、そんなに残酷な事を言うのだろう・・・。
酷い・・・。
私が好きなのは、和美・・・、和美なのに・・・。

「わ、私が、本当に好きなのは・・・、好きなのは・・・。」

「朋美、滝川さんは、本当に、朋美のことを・・・。」

「やめて!!」

もう我慢できなかった。
和美は、何も解ってない。

私がずっと想い続けているのは、和美、あなたなのに。
今目の前にいる、あなただというのに。

どうして、私に違う誰かの事を勧めるの?
私は、和美、あなたの事だけを、ずっと想ってきたのに・・・。

「朋美・・・。」

「和美、お願い、もうそれ以上言わないで・・・。」

「朋美・・・。」

「和美は・・・、和美は解らないから、そんな事が言える。
 私が、どれだけその人の事が好きなのか、解るはずない!!」

「解る!! 和美が今どんな想いでいるか、少しは解るつもりだけど・・・。」

「解るハズない!!
 和美! あなただって、ずっと好きな人がいるんでしょ!!
 その人の事、忘れて、すぐ別の人の事を好きになることなんて、あなた、できるの?!」

「そ、それは・・・。」

「酷いよ・・・和美・・・。
どうして・・・、どうして今日、そんな事言うの・・・。
どうして、最後の夜に、こんなことを・・・。」

「ごめん・・・。 でも、朋美に最後に、どうしても伝えたい事だったから。」

「和美・・・、お願い、もうその話しはやめて。 お願い・・・。」

さっきまで溢れていた涙とは違う涙が止まらなかった。
両手で顔を覆い、もう和美の顔を見ることができなかった。

見れなかった。

「ごめん・・・、朋美・・・。」

何も言えなかった。 今口を開けば、嗚咽しか出ない。

「ごめんね、最後に嫌な思いさせて。いままで・・・、本当に、色々ありがとう。 
 これ、つまらないものなんだけど、今まで会社でお世話になったお礼。 それじゃ・・・。」

顔を上げられなかった。
涙がまだ止まらず、ひたすら流れ落ちていた。

隣りにいたはずの和美の存在が消えた。

去っていった和美を追いかけることができなかった。

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