『めぐり逢えたら -最終部-』
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【和美Side21】

「あのさ、朋美」

退社をあと2日に控えた日の昼休み、朋美に唐突に切り出した。

「なに?」

会社を辞める理由、あの夜の事を全て謝ろうと思ったあの日、
朋美は、私を責める事も、怒鳴ることもなく、全てを赦してくれた。

すれ違った1週間が過ぎ、今まで通りの親友の関係に戻った今、
会社を辞める前に、純粋に長年一緒に過ごしてくれた友人としてお礼をしたい。

「あのさ、明後日の夜、何か予定ある?」

「えっ? 別に何もないけど・・・。」

明後日、それは和美が会社を辞める最後の日。

「あのさ、少しつき合ってもらえない?」

「えっ? 最後の金曜の夜?」

「うん。」

「最後の日は、他の誘いとかあるんじゃ・・・」

確かに、この日は課内の身近な人たちが食事に誘ってくれていたけれど
予定があるからと断っていた。

我が儘だけれど、会社を辞める最後の夜は、朋美と一緒に過ごしたかった。

「最後に今までのお礼を兼ねて、朋美と食事でもどうかなって思ったんだけど、ダメかな?」

「だ、大丈夫! その日は何も予定ないから。」

「良かった。 それじゃ、お店は私の方で予約しておくから。」

「うん、解った。」

「ありがとう。 ごめんね、急に誘って。」

「いいの、誘ってくれて嬉しかった。 金曜日楽しみにしてる。」


最後の金曜日。

誘ったのは勢いだった。
考えても居なかったことを、口が勝手に言葉を紡いだ。

どうして、最後の最後に誘ってしまったのだろう。
自分の往生際の悪さに呆れてしまう。

私が実家に戻った後、その後も朋美と逢えるとは限らない。
離れてしまえば、その後の事など解りはしない。

私がいなくなった会社で、朋美は私の知らない生活を始める。
知らない人間関係ができて、しらない友人ができるかもしれない。

朋美の長年想い続けている相手と、なんらかの進展が突然起きるかもしれない。

何が起きるか解らない。
けれど、その時、朋美の隣りにいるのは、私じゃない。

その後、朋美の隣りに、朋美の一番側にいるのは・・・。
昼休みを終え、職場に戻った後、一通のメールを出した。

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