『めぐり逢えたら -最終部-』
<<TOPに戻る

【朋美Side18】

和美とのわだかまりが解消されて、やっと現実を見つめられるようになった。
例え友情が変わることがなくても、和美が会社を去ることには変わりがない。

いままで、毎日のように同じ時間を過ごし、土日逢えないだけでも、時々淋しさを感じていたのに
これからは、逢える時間の方が限りなく少なくなる。

というより、和美が会社を去った後は、次何時逢えるのか、
それよりも、これからも、今までと同じように逢ってくれるのだろうか、
そんな不安が少しずつ心の中に小さな泡のように、ぽつり、ぽつりと浮かんでくる。

別々の環境で過ごし始めれば、私はともかく和美には新しい生活が始まる。
新しい環境の中で、新しい人と出会い、その人達との生活が中心になる。

今まで和美に一番近い存在だったのに、離れて生活するうちに、
いつか、和美の隣りには、私じゃない誰かがいるんだろうか。

和美の中の私は、いずれ過去の思い出の中の1人になってしまうんだろうか。

そう考えると、胸が痛くなる。

離れたくない。
和美と離ればなれになりたくない。

いつだって、和美の中では、私が一番近いものでいたい。
いままでだって、これらだって、私が一番和美の側にいるものでいたい。

いくら私がそう願っても
いくら、私がそうしたいと思っていても

来週には、和美は別の世界へと旅立つ。

イヤ・・・
嫌だ・・・

離れたくない・・・


でも───

どうにもならない。


何度も、何度も、

“行かないで”

和美の横顔を見ながら、心の中で叫ぶ。


「あのさ、朋美」

和美が会社を去る2日前のお昼休みに、和美に声を掛けられた。

「なに?」

「あのさ、明後日の夜、何か予定ある?」

「えっ? 別に何もないけど・・・。」

明後日、それは和美が会社を辞める最後の日。

「あのさ、少しつき合ってもらえない?」

「えっ? 最後の金曜の夜?」

「うん。」

「最後の日は、他の誘いとかあるんじゃ・・・」

「最後に今までのお礼を兼ねて、朋美と食事でもどうかなって思ったんだけど、ダメかな?」

「だ、大丈夫! その日は何も予定ないから。」

「良かった。 それじゃ、お店は私の方で予約しておくから。」

「うん、解った。」

「ありがとう。 ごめんね、急に誘って。」

「いいの、誘ってくれて嬉しかった。 金曜日楽しみにしてる。」


最後の金曜日。

誘われたのは嬉しかった。
私も、本当はもう一度、2人で一緒に過ごせる時間が欲しかった。

でも、この間の事があったから、少し怖くて自分から言い出せなくて。

朋美が誘ってくれた金曜の最後の夜、
私はいつもの通りに振る舞えるか、冷静でいられるか、自信がなかった。

次のページへ>>