『めぐり逢えたら -最終部-』
<<TOPに戻る

【和美Side19】

月曜の朝、穏やかな気持ちで会社へ出勤する。

今日は朋美は会社へ来るだろうか?
滝川さんの話しでは、今日は来れるだろうと言っていたけれど。

恐る恐る更衣室のドアを開け、一歩踏み出す。

視界の中に朋美の背中を見つけた。

朋美・・・。

そっと近づき、声を掛ける。

「おはよう、体調はどう?」

突然声を掛けたことで、朋美の肩が一瞬上下する。
すぐに体をひねるように振り返る。

「あっ、えっと、あっ、もう大丈夫。 ごめんね、この間心配かけて。」

朋美ときちんと向き合って会話することが、ものすごく久しぶりな気がした。

「良かった。」

朋美と普通通りに話せた事、朋美が少し不安気ながらも、返事をしてくれた事に
ほっと心をなで下ろした。

自分のロッカーへ移動し、制服に着替える。
着替えながら、いつものように、朋美が私の着替えを待っていてくれることを
心の中で静かに祈る。

着替え終わり、静かに振り返ると、朋美はロッカーの前で、
私を待っていてくれた。

「お待たせ、行こっか!」

いつもと同じ朝、久しぶりな日常。

職場へ向かう途中、朋美に今まで何も連絡しなかった事を詫びる
言葉を小さく口にした。

「ごめん、結局携帯に電話しなくて・・・・。」

「うぅん、いいの。 ごめんね、こっちこそ、しつこくメールしたりして。
 それと・・・、昨日和美、うちに来てくれたんじゃ・・・。」

朋美は私が何も連絡しなかった事を赦してくれる。
その変わりに、昨日朋美のマンションへ向かったことを切り出され
その問いを遮るように言葉を口にした。

「今日、昼休みにちゃんと全部話しすから。」

今は、そう言うのが精一杯だった。

「うん、解った。 それじゃ、お昼にね。」

そしてお互いの職場へ向かい、午前中は引き継ぎ用資料を作る作業に没頭した。

今日の昼休みで全てを話そう。
そして、友達という位置固めをして、ここから去ろう。

ふと顔を上げ、窓の外を見ると、空は雲一つ無く、見事に晴れていた。
清々しい空の下で、私たちは友情を誓い、そして全てが終わる。

正午を告げるチャイムが鳴り、ゆっくりと朋美がいるであろう屋上へ向かった。

次のページへ>>