『めぐり逢えたら -最終部-』
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【和美Side18】

朋美のマンションからの帰り道、電車に乗りながら、駅から自分のマンションへの帰り道、
頭の中には、朋美との数々の思い出が、浮かんで消えた。

部屋に戻り、鞄を部屋に投げ置き、ベッドに横になる。

来週で実家に戻る。
朋美の側にいれない不安、側にいて支えられなくなる淋しさ。
けれど、今日解った。

私の変わりに入れ違いで戻ってきた滝川さん。
まるで、私の役目を変わりに引き継ぐようにして現れたタイミング。

倒れた朋美の側にいたのは滝川さんだった。
もう私がいる場所はない。

もうすぐ役目が終わる。
私が去った後、きっと滝川さんが朋美を見守ってくれる。

朋美には想う相手がいるけれど、愛情をもって支えていれば
いずれ、朋美もその想いに応えるかもしれない。

滝川さんなら、きっと温かく朋美を包んでくれる。
経済的にも、朋美を守っていけるだろう。

朋美の側にいるのは自分よりも滝川さんの方がふさわしい。

自分よりも、滝川さんなら朋美を幸せにできるだろう。

これでいい・・・、
これで、心おきなく離れられる。

明日、朋美に全てを話そう。
この間の事を全て謝ろう。

それで・・・、それで、何事もなかったように、いつもの友達に戻ろう。

これでいい、これでいいんだ・・・。

自然といままで荒れ狂っていた自分の心が、穏やかになったのが解った。

自分の不安と狂気で朋美を傷つけてしまった事を想うと
今でも胸が痛くなる。

悔やんでも悔やみきれない後悔。

けれど、滝川さんとの事を知った今、
滝川さんが、朋美を大切に想い、今側にいてくれることが解った今、
もう思い残すことはない。

自分の中の朋美への想いは、これからもずっと続くけれど、この想いは自分の物。

側にいられない淋しさは募るだろう。
当たり前のような、幸せだった日常が去っていくことは、とても悲しいだろう、
けれど、いつかこの想いと共に、温かい思い出に変わるだろう。

何年かかるか解らない、何十年かかるか解らない。
けれど、淋しさも哀しさも苦しさも、この心に刻みつける。

この傷と共に、自分は新しい生活を歩き出す。

朋美・・・、
もうあなたの側にはいないけれど、どんなに離れていても、あなたの幸せを常に祈り続ける。

朋美への想いを胸に秘め、その日は穏やかな眠りについた。

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