『めぐり逢えたら -最終部-』
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【和美Side16】

滝川さんの口から、朋美との事を全て打ち明けられた時、
頭の中を鈍器で殴られたようなショックを受けた。

診療室で、朋美と滝川さんが、恋人同士だった事を伺わせる事を耳にした。
けれど、出会いから別れに至る前での全てを耳にすると、
朋美と滝川さんとの10年という時間が、とても重いものに感じてしまう。

私が朋美にできること、ここを去る私にはなにもない。
けれど、滝川さんは、朋美の側に戻ってきた。

これも、何かの縁なのかもしれない。

私と朋美とのつながりは、こういう運命なのかと納得してしまう。

偶然なタイミングが重なり合う時、それは偶然ではなく必然に違いない。

電話するタイミングを失う。
電話したところで、何をはなせばいいのか解らない。

朋美が倒れた原因は私、追いつめたのも私。
朋美の側にいられない私が、朋美の為に出来ることが何もない。

携帯を開いたものの、結局朋美の番号を表示させたまま、何もできずにそのまま閉じた。


土曜、部屋の片づけを始める。
来週1週間で、会社を辞めて、その後に引っ越し。

荷物をまとめ、不要な物を捨てる準備をする。
電化製品は、使うかもしれないから、実家に引き上げる。
不要な家具は、来週末に廃品回収にきてもらうようにする。

季節違いの洋服を段ボールに詰め、普段使わないものもを整理して箱詰めする。

荷物整理をしていたら、夜遅い時間までかかってしまう。
明日、もう送れるものは宅急便で送ることにする。

居間で、小物の整理を始めた時、ふと、小さな紙袋にいれた箱が目に入る。

あぁ、これは・・・。

クリスマスに、朋美に送ろうと思っていた懐中時計。
ロクサーヌの名前が刻まれた、愛しい人への忍ぶ想いを密かに伝えたかったプレゼント。

結局渡すことができず、自分で使おうかと思ったけれど、開けずにいたもの。

ふっ・・・、と息をこぼし、そのまま部屋の机の片隅に置く。

クリスマスに一緒に過ごした事を思い出す。

押し殺した気持ちが、急激に溢れ出す。

朋美に逢いたい・・・。

翌日、朋美の部屋へ向かう。
体調が心配なのと、逢いたくなったから。

昼過ぎにマンションへ着き、入り口で、オートロックのインターフォンを鳴らそうとした時、
向かい側から来る人影が目に入った。

た、滝川さんっ?!!

自動ドアが開いた所で、滝川さんが私に気が付いた。
私以上に驚いているのか、目を大きく見開き、その場で立ちつくしていた。


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